MasaichiYaguchi

夕陽のあとのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
4.0
風光明媚な鹿児島県長島町を舞台に、一人息子を巡って育ての親と産みの親が親権争いを繰り広げる本作は、是枝裕和監督の「そして父になる」の母親バージョンと言えるかもしれない。
ただ「そして父になる」と違うのは、片方の母親が圧倒的にビハインドなものを抱えている点にある。
更に社会問題になっているDVや乳児遺棄、不妊治療や養子縁組制度まで言及し、家族の大きな“節目”を通して2人の母親夫々の葛藤や苦悩を浮き彫りにしていく。
日野五月は夫・優一と共に島でブリの養殖業を営んでいて、里子制度で赤ん坊の時から育ててきた7歳の息子・豊和との特別養子縁組みを遂に申請する。
ところが、1年前に島にやって来て、食堂で働いている佐藤茜が豊和の産みの親と分かってから事態は急変していく。
茜は7年前にネットカフェで乳児置き去り事件を起こして服役した過去を持つ。
映画は、茜の過去に何があって、何故乳児を遺棄したのかを紐解いていく。
そして血の繋がりはないが、五月や優一、祖母・ミエと如何に家族の絆を築いていったかを、茜の過去とコントラストを成すように描いていく。
茜は過去を贖罪し、もう一度愛すべき息子と人生をやり直そうと考え、五月は、血が繋がってなくても“真の親子”になろうと決意している。
この2人の母親の譲れない決意は火花を散らし、その背景を知らずに板挟みになっている豊和が彼女らに寄せる優しさが切なくて胸を締め付ける。
母親達を演じた貫地谷しほりさん、山田真歩さん、豊和役の松原豊和くん、この3人の演技が素晴らしく、切なさや悲しみ、そして慈愛が心の奥の方まで届いてくる。
果たして2人母親は、どのような決断を下すのか?
映画に何度も登場する長島町の「夕陽のあと」の海の風景が美しく、その美しさに涙が零れてしまいます。