LalaーMukuーMerry

夕陽のあとのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
4.3
このひとつ前に見た「光をくれた人」と同じテーマの作品でした。生みの母か?育ての母か?問題。小さな子供に罪はないのに・・・
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舞台は鹿児島県長島(鹿児島県側から天草に行くルートの途中にある島)、美しい夕陽の景色が印象的でしたが、日常生活のリアリティを描く部分のゴチャゴチャ感はしかたないか。「光をくれた人」のように全てのシーンを美しくと望むのは、地域おこしの低予算映画に対して酷というものでしょう。
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でもいい作品でした。感情的になって厳しく対立した後、冷静になってお互いに相手の立場を考えて和解に至るプロセスが丁寧に描かれておりました。大人の込み入った事情を何も知らない7歳の男の子が、二人の母親を仲直りさせようと動く様子はけなげで泣けました。母親ふたりが漁船を操って沖に出て、静かで広い海の上、二人だけで和解した会話シーンのセリフにジーンときました。
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母親どうしは大きな葛藤を乗り越えて和解に至ったわけで、これはこれでよいのですが、この映画で全く描かれていないことがあります。それは子供の実の父親。DVを繰り返したあげく母子を捨てて姿を消した父親。なんでそんなことになったかのか? アル中、ギャンブル中毒、女遊び、失業、事業に失敗? 詳しいことは何もわからないが、ろくでもない男なのは間違いない。あんたのせいで二人の女性と一人の子供が大変な苦労をしているということを想像するくらいの感性をもってもらいたい。
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こういう男を減らすために社会ができることは何なのだろう? いろいろ考えられますが、大きな柱は性教育なのではないか、と最近思うようになった。愛情=個人の尊重か、暴力=利己主義か、両者が紙一重で隣り合っているのが性の問題だ。誤った認識を植えつけるとおかしな人間が育つ。それを思うとこの国の学校教育における性教育は貧しくてレベルが低すぎると感じます。