ヤグ

夕陽のあとのヤグのレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
3.9
【貧困に追いつめられた母と血の繋がらない母、2人の母にとって唯一無二の子】

血の繋がりはないが、物心つく前から共に暮らしてきた子ども。
いざ特別養子縁組の手続きを始めると、突然、その子を捨てたはずの実母が登場します。
しかも驚くことに、その人は顔馴染みの女性だったのです。
彼女は時間をかけ、用意周到にひっそりと親子に忍びよってきていました、、

こう考えるとホラーみたいな物語にもなりそうです。
しかしこれは里親である母から見た一方的な視点です。

傍から見ればわが子を置き去りにした実母の方がどうみても悪い、善悪基準で言えばその通りです。


しかしもう一方の実母側にもまた別のストーリーがあります。

「彼女の犯した罪は?」
「なぜ愛する息子を手放したのか?」

隠されていた事情がミステリーのような展開で明らかになって
物語に引き込まれていきます。

その真実が明らかになった時に、簡単に実母が悪いと言い切ることができるでしょうか?


そんな2人の母の想いは一緒
「母としてこの子と一緒に暮らしたい」
それだけなのです。

第三者が簡単に答えを出すことはできない難問に
今作はどのような答えを導くのか期待しましたが、
少し残念でした。

前半の完成度は驚くほど高いです。
しかし後半は説明的なシーンが多いです。
特に終盤の子どもが実母に話したブリの親子の話し。
何の脈絡もなしに急に物語の核心をつくようなセリフを言うもんだから
あざとすぎます。
 
とは言っても色々考えさせられる秀作でした。
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