乙郎さん

海辺の映画館―キネマの玉手箱の乙郎さんのレビュー・感想・評価

2.5
戸惑ったのは事実。客観的にみれば『この空の花ー長岡花火物語』('12)以降の4作では映画としての出来は最も低いことがわかる。「遺言」であることをセルフプロデュースしているのもズルい。ただ、これは映画だけで完結するような話ではないと思った。
大林監督の晩年4作は近作になるほどよりストレートになっている。それは、この映画が「説教」だと言うことを隠せなくなっているということでもあり、原因を病魔による体の衰えに求めることもできるかもしれない。
ただ、自分はこの映画のラストを観て、全然終わっていないこの映画を遺作であるという理由で嵩増しするのは逆に失礼ではないかと思った。遺言ではあるが、遺作ではない。

個人的にはね、大林を始めて観てからの約20年間の去来と、沖縄民謡が流れてきた瞬間に自分の近い話としてシンクロした衝撃が大きく、主観的に見ればそりゃ、とても困った、決して映画的快だけじゃすまない宿題を貰ったと思ってね。

ラストを観る限り、大林宣彦監督の新作は観れないが、この監督に影響を受けた作品は常に次回作になり得るということが示されてしまったんだよな。何というか、さよならしようと思ったらさよならさせてくれない、困った、けれどももう少し困ることを引き受けようと思わせる映画だった
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