ピッツア橋本

海辺の映画館―キネマの玉手箱のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

4.4
“映画という名の未来への遺言”

大林宣彦監督の遺作。
前半が処女作『HOUSE』を思わせるメタ的で一昔前のCGアートを思わせる演出の数々。そこにうねうねした説明台詞が延々と続いて死にそうなほど退屈で途中で寝た。
舞台が広島というので“尾道三部作”を期待するとこの前半には出鼻をくじかれること必至。
どんなに高橋幸宏がダンディーでも無理なものは無理!イライラして思考停止した苦笑
唯一意識を繋ぎとめたのは
TOHOシネマズサポーターのあの子(山崎紘奈)の演技が新鮮だったことくらい。

大林宣彦のラスト作品という前情報が無かったら間違いなく鑑賞をここで断念していた。

がしかし!後半の1時間でそれらが全部すごく重要な伏線だと気づいてから刮目して観た。

反戦映画というのは星の数ほどあれど、こんなにも映画を通して監督個人の主張や願いを封じ込められた作品は他にあっただろうか。
ものすごく独特な歴史の教科書を音読されたような気分にもなる。

ネタバレスレスレでいうとクライマックスは尾道最終章であり、広島ver時をかける少女でもあり…ともいうべき締め方で涙腺が崩壊。

すごい3時間の劇中劇、大林宣彦にしか成し得ない変態的超大作でした。

大林監督はきっと本作で全て言い切って旅立たれたのだなあと感服。
彼の場合、あの世に旅立ったのではなく宇宙の風になったような気もする。
きっとあのサングラスには数多の星々がキラキラと反射している事でしょう。
止めないでSFロマンティックノスタルジー。
『異人たちとの夏』が大好きでした。
改めましてさようなら、大林先生。
ピッツア橋本

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