ノラネコの呑んで観るシネマ

海辺の映画館―キネマの玉手箱のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

5.0
圧巻。
晩年の「戦争三部作」を内包しつつ、次の世代に伝えたいことを全て言い尽くした。
これほど見事な「遺言」を残した映画作家がいただろうか。
瀬戸内の古い映画館が閉館の日を迎えて、最後のオールナイトが開かれる。
テーマは「日本の戦争映画。」
例によって、これは大林宣彦の脳内ワンダーランド。
既存の映画文法は意味を持たず、ここでは生者も死者も過去も未来も現実も虚構もシームレスにごちゃ混ぜ。
幕末の戊辰戦争から始まって太平洋戦争まで、中原中也の詩をガイドに日本の時代と戦争が描かれる。
たぶん普通の映画しか知らない人が観ると、前半1時間くらいはすごく入りにくい。
法則性がほぼ無いので、何が起こってるのかも分からないかも知れない。
しかしそれでも次第に溢れんばかりのエモーションの嵐に巻き込まれ、心が激しく揺さぶられるだろう。
貫かれるのは徹底的な映画への愛、というか信頼。
大林宣彦は虚構は現実ではないが、未来の現実を動かせると信じている。
しかしコロナの影響で公開延期になったが、本来の公開初日に死去するとか、どこまでも映画の神に愛された人だったんだなあ。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1352.html