たく

海辺の映画館―キネマの玉手箱のたくのレビュー・感想・評価

4.5
圧倒的エネルギーに完全に引き摺り回された!
まもなく閉館する海辺の映画館で日本の戦争史を描く映画を上映する話で、観客が上映中の映画世界に入り込んで現実との間を行ったりきたりする猛スピードの編集と、前に出たシーンが何度もフラッシュバックするゴダールっぽい演出に狂気を感じた。題名の通り玉手箱みたいな映画で、大林監督のデビュー作「HOUSE」を彷彿とさせる命がけの遊びが伝わってきたね。
登場人物のサイレント映画っぽい早送りの動きとか、あえてチープな合成映像にしてるとか、監督おなじみの演出。鮮やかな色彩の美しさも彼ならでは。

前半で互いに殺し合う歴史を繰り返す日本人をコミカルに描きつつ、インターミッションを挟んで後半の成海璃子の遊女のシーンがしっとりと情感を感じさせるのが良い。ここから情緒的なBGMが最後まで途切れず流れていくのがいいんだよね。
終盤に向けて第二次世界大戦から広島の原爆につながっていき、最初に登場する少女が誰なのか分かっていく展開。彼女が座敷童で登場するのが「世にも怪奇な物語」のフェリーニ「悪魔の首飾り」みたいな不気味さと、南原清隆の死の舞いはゾッとする怖さだったね。
無法松の一生は泣けた。
終盤の怒涛のメッセージはちょっとしつこかったかな。

キャストが盛り沢山で、中江有里がひさびさすぎてびっくりした。尾美としのりが出てたのも感慨深い。
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