やまモン

海辺の映画館―キネマの玉手箱のやまモンのレビュー・感想・評価

4.0
【平和への切なる願い】

大林宣彦監督の最後の作品です。

尾道にある海辺の映画館がついに閉館となり、最後の夜はオールナイトで日本の戦争映画の歴史を上演するというのが導入です。

海辺の映画館=大林宣彦、であるとするならば、やはり監督が最後に伝えたいのは戦争のこと、そしてとりわけ理不尽にも戦争に巻き込まれる、戦闘員ではない一般の人々の悲惨な身の上ということになるのでしょう。

故に内容自体は荒唐無稽で難解であるものの、大筋では、監督の平和への切なる願いが直球で伝わってきますね。

出演している男性俳優陣の若干弱々しい感じも割りと好きなのですが、やはり素晴らしいのは女優の皆さんですね。

それぞれの時代の女性の役を演じつつも、その人そのものの魅力を遺憾なく発揮しています。

さらに言うと、皆さん包み込むような慈愛に満ちた雰囲気で、これが監督の女性観なのかなぁと思ったりもしました。

この映画を観たのが、奇しくも8月6日の朝、ということで、多くの非戦闘員が原子爆弾によって命を理不尽に奪われたのと同じ日でした。

戦争法によって戦闘員と非戦闘員は区別されていて、戦争は建前では戦闘員が行うものとされています。

しかし、非戦闘員もまた、戦争から自由である訳ではなく、様々な危険にさらされるというのが現実です。(特に負けている側がこのような状況になりがちですね。)

これは総力戦の時代だけの話ではなく、人類の誕生以降、今に至るまで連綿と続いていることです。

故に、戦争が出来なければ国を危うくしますが、勝てない戦争を断行することは、多くの国民を不幸にしてしまいます。

戦争とは必要であれば行わなければなりませんが、それは最後の手段であって最良の手段ではありません。そして善も悪も無いのです。

ただ、本来死ぬ必要がなかった人が死んでいく。

多くの人々がこの作品を契機に、戦争とは何か、ということをもう少し真剣に考えてくれると良いですね。

さあ、平和を祈りましょう!