海辺の映画館―キネマの玉手箱の作品情報・感想・評価

上映館(12館)

「海辺の映画館―キネマの玉手箱」に投稿された感想・評価

tak

takの感想・評価

5.0
日頃映画の感想で用いる言葉を駆使しても、大林宣彦監督の遺作「海辺の映画館」の感想をうまく言い表すことは難しい。
感動、共感、圧倒された、感じるしかない、ノスタルジー、ファンタジー、厳しい現実、独特の美学、アート、etc。
これらの言葉が、この映画の前には陳腐に感じる。そんな要素がすべて盛り込まれていて、ニヤッと笑えるかと思えば、あまりにも無残な死を前にして戦慄し、少女の微笑みにほっこりしたかと思えば、悲劇に涙する。3時間、目の前を様々な映像が通り過ぎるけれど、どれも強烈なインパクトや個性、熱量を持っている。

映画冒頭に示されるように、これは映画で表現する文学。中原中也の詩が読み上げられて、画面左端に映し出される縦書きの文章や台詞とともに、描かれるエピソードと呼応する。されど大林宣彦監督はカルトな人気作「HOUSE」や最初の尾道三部作でも見られるように、静止画、色彩の変化、ノイズを交えたエフェクトを織り混ぜた映像のコラージュとも言うべき表現を用いる人でもある。監督自身の手による編集はとにかく凝っている。

文章表現なら既出の場面を匂わす程度しかできないことを、その場面を執拗に挿入することで、込められたメッセージを強烈に印象づけている。特にチケット売場のおばちゃん白石加代子が繰り返す「ピカ!」のひと言。最初から原爆のことだろうと察しはつくけれど、映画後半の慰問劇団桜隊のエピソードになってその繰り返しが意味をもってくる。原爆が落ちた瞬間の「ピカ」で死んだ人々と、その後の爆風による「ドン」で死んだ人々について被害の事実が示される。ピカとドンの境目で、訳もわからず死んだ人と少なくとも何か起こったことを閃光で知った人との差。映画は他にも時代を超えて戦争の犠牲となった若者たちのエピソードが語られる。戦争とはいかに痛ましいものなのか。ファンタジックな表現を交えつつ、日本人が日本人を殺すことすらあった戦時中の恐ろしさが描かれる。この映画を観たら、戦争をファンタジックに描いた「ジョジョ・ラビット」なんて、それ風に見える包紙で覆われただけにしか思えないだろう。

一方で、映画愛を描くことも忘れない。パラパラマンガをフィルムに描き込んだアニメーション、戦時中に会ったジョン・フォードらしきアメリカ人映画監督、小津安二郎も出てくる。何よりも主人公3人は、名だたる映画監督の名前をもじったもの。なんて素敵な遊び心だろう。そして映画館という場所への愛おしさ。

3時間、平和と反戦の言葉が幾度も繰り返される。死の間際に走馬灯のように人生を思い返すと言うが、この映画は大林宣彦監督が臨終に見るであろう、その走馬灯の光景をスクリーンに刻みこんだ作品なのだ。とにかく監督が伝えたいことを詰め込まれた映像の迷宮。寺山修司の映画を2回連続で観るくらいの覚悟で(?)、この長尺な怒涛の映像表現のラビリンスに迷い込んで欲しい。
「世界に平和が訪れたらまたお会いしましょう」
と映画は結ばれる。その言葉がズシリと響く。
lp

lpの感想・評価

4.5
開始1分で大林監督の世界観が全開になる展開からして早々に面喰らうのだけど、監督が叩き付ける強烈なメッセージがさらに突き刺さる。今作自体が映画の歴史を巡るタイムマシンとしての機能を有す入れ子構造も素晴らしい。圧倒的かつ濃密な3時間!
sango

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4.5
グッタリと、今とても疲れている


見たあと、これだけ入れてひと眠りしてしまった。この映画への旅から帰ったらライフが尽きたんだろう。監督の脳内を迷路のようにさまよい歩いたような感覚。
映画の手法への戸惑いが強く前半はやや冷めた気持ちで見ていたが、後半の生々しさは鬼気迫るものがあった。涙が出たのは悲しみとか哀しみとかよりも苦しみとか悔しみというか…痛みを感じた気がする。
監督からの大きな宿題。
kazmi

kazmiの感想・評価

-
あらもう、タイヘン、な映画でございました。
大林監督の作品をいくつか拝見して、覚悟して臨みましたが、初めて見たら面食らうだろうな。
カット割りもセリフも、細かい、速い。
奇妙キテレツなのに、何かある…!濁流のように流れてくるメッセージに、ガブガブ水飲んで溺れちゃいました。
そして、過去の大林作品に出ていた俳優さんが出るわ出るわ。キャスティングも玉手箱。
小小野

小小野の感想・評価

4.0
独特な映像と、ストレートなメッセージ
もう一番最初から好きなやつだ
HOUSE ハウスの時も思いましたが

映画というのは引用とコラージュによってできている、、って言ったのは誰だっけ
中原中也の詩から多くを引きつつ、江戸から昭和まで、数々の戦争をモチーフに作られた「戦争映画」の中を引っ張り回され転がり落ちながら巡っていく海辺の映画館の最後の一夜!

よってらっしゃいみてらっしゃい、なんて掛け声こそないけれど、弁士に生演奏に便所臭い空間、ラムネとはしゃぐ子どもたち、、、思い出話でしか聞かない昔の映画館の姿をしっかり見させてもらいました

世界の平和のために、というテーマは監督自身が大々的に掲げているけれど、ひとつひとつの、抗議の声や戦争批判、権力と多数派の元におかしな言動を繰り返す人々の姿は、この映画の中の映画、つまり戦争映画の登場人物によって粛々と提示される

決して押し付けない、これがおかしかった、ここが悪、と個々を判断するのではなく、ただただ提示していくそのやり方
それぞれに対して、特に何も思わないのならそれで良い、わからなかったらそれで良い、
でも全部合わせてみたときに、なんとなくだとしても、やっぱり平和が一番だ、という感想は持って帰ってね、
ってそんな事を言われている気がしました
ひる

ひるの感想・評価

3.8
フェリーニの『ボイスオブムーン』、黒澤の『夢』的な立ち位置かな?最初の方はぶっ飛んでて全然ついていけなかったが、大林が言わんとしていることはまぁ分かった。
akiko

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4.2
凄い映画を観た。よく分からない状況から、どんどん引き込まれていった。
本当の歴史を知り、考える事を求められる。
観客は高みの見物では駄目だな。
Imymemine

Imymemineの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

「『映画』で伝えられること」が凝縮された実験的作品。ミュージカルにアクション、映像の反復やコラージュのような表現、アニメーション、白黒、トーキー、字幕など、様々な技法が訴えかける強いメッセージ。
どう盛り上げていくのだろう?とウキウキしていているうちに上映が終了していた。いい意味で。すごい!映画の可能性を感じる映画。わたしは結構好きだったな。

″女″の描かれ方がややステレオタイプで引っかかる点は多々あったが(主人公たちを引き立てるため死んでいく女/女は男が守るべき存在/女は男に教えを乞う存在/理想像詰め合わせシンボリックな母親像)『日本の戦争』を題材として取り扱う以上仕方がないのかなあとも思ったり。
あと若手育成と分かっていても演技が気になってしまった。(メインのチンピラ坊主とそのヒロインは凄く良かった!)が、『後世に繋げたい』という監督の意思と捉えると納得なので、これも強くは言及できない…。笑

尾道観光に来たので尾道シネマで尾道舞台の映画を観た。大林監督の作品観るの、実はこれがはじめてです。尾道三部作も追って観ます。
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