ふくろう

ハリエットのふくろうのレビュー・感想・評価

ハリエット(2019年製作の映画)
3.3
幼い頃、奴隷監督に頭蓋骨割られて神様の声が聞こえるようになったんだけど、その声に耳を傾けていたら追っ手の待ち構えてる場所がわかったり、急流の中で、浅瀬になって渡河できるポイント見つけられたりして、うまいこと何十人もの奴隷を救いだし100マイル先の安全な街へ導いていった女性の話。

200年前の偉人の物語、そんなに資料も残っていないだろう奇跡としか思えない史実と史実の間を埋めるピースを創り出すのが歴史物語の醍醐味だと思うんだけど、奇跡の舞台裏を「神の導き」なる奇跡で説明してしまったところに日本人にはどうも消化しきれない精神性を感じる。

本当は一人の偉人の正体は名も語られない何人も隠れた功績者が集まって生み出された偶像だとか、行き当たりばったりでどうやってもいくつもの偶然が積み重なって成功したように見えて、本当は常軌を逸した入念な下準備の元に行われてたんだとか、奇跡の説明にそういうバックストーリーが語られると思うのだけど、ここでは、いきあたりばったり+神の声。

奴隷解放運動の中で黒人は簡単に死ぬ。一方。で白人は大怪我は負うのだけど、死なない。殺したいし、自分の安全もある状態で、銃を突きつけ、実際撃ち、大怪我を負わせるんだけどそこで終わる。死を直接語らない優しい作品なのかと思えば黒人は自由黒人であろうと頭を撃たれ、顔を強打され、簡単に死ぬ。目も抉られる。白人怖い。

過酷な黒人の歴史と非道な白人が描かれる一方で、白人は何の疑問もなく「酷く扱われない」ところに、やはり白人でも黒人でもない日本人にはうまく消化しきれない精神性を感じてしまう。

ミュージカル映画になりたいのか、よく歌うし無駄に壮大なBGMが流れるが中途半端。

しかしまぁ、タイムリーな話題だし、重いテーマの割に構造がシンプルで頭を使わずに楽しめる映画だったので、お薦めはできるかな