サンヨンイチ

ハスラーズのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

ハスラーズ(2019年製作の映画)
3.5
予告編からエロ全開だった今作。
決してやましい気持ちで
観に行った訳ではない、と
自ら言い聞かせつつ、
意外と女性客が多いことに
気まずさと緊張感を感じながら鑑賞。

のっけからストリップバー全開で
気持ちのやり場にとにかく困ったが、
ジェニファーロペス登場により、
エロを書き消すようなポールダンスの魅力と
大波打つ褐色の背筋に
映画的演出の域を越えた芸術を感じました。

彼女生来の美貌も去ることながら、
魅せ方や見えられ方、映し方などから
感じるプロフェッショナルの集合体度合いがすさまじく、
冒頭の、どちらかと言うと、
フリになるシーンでこの気合いの入りようは
日本の公開規模が小さすぎると不満を漏らさずにはいられません。

作品としては
コンゲームの系譜を予想していましたが
そんなことはなく、痛快さも比較的薄味。
期待していた味とは違い、残念に思いました。

ストリッパーという
偏見に晒されがちな職種でも
野心をもって輝いていこうとする前半のサクセスストーリーが
誰が観てもハッピーに感じられるのに対し後半は対照的。
リーマンショック以後、
くすぶり続けた女性たちが
己の歪曲した野心を正当化し、
悪事を悪事とも思わず、
それでも辛い、大変だとのたまう身勝手さが
共感できません。
自分をその犯罪集団のCFOだ、と自称する辺りが象徴的で、
前半の成功よかったねぇ…という気持ちから
一気に感情移入できなくなってしまう乖離感がこの作品の特徴のように感じて逆に楽しめました。

愛の形がテーマのひとつでもあり、
疑似家族的な関係性を構築し、
心から楽しんでいるようなシーンもたくさんあり、愛が溢れているようにも見えますが、
結局は罪を犯して手に入れたお金に過ぎず、
プレゼントも愛の籠った、とかではなく高価そうなものにひたすらに喜ぶ潔さが
よいシーンのように見えて絶妙にチープ。
主人公2人以外と心を開いて話しているシーンが全くなく、絆と呼べるような深い結び付きに見えない所は意図的なものなのかもしれません。

そのなかで、
主人公二人の絶妙な間柄が
他のバディものにはない関係性で興味深かったです。
ラストの詰めも綺麗で、ほんの一握りの愛情を最後の最後に濃く感じられる作りに
スッキリさせられ
トータルで好意的な作品に感じられました。