hynon

ルース・エドガーのhynonのネタバレレビュー・内容・結末

ルース・エドガー(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「誰からも称賛される17歳の高校生ルース。彼は完璧な"優等生"か、それとも恐ろしい"怪物"なのかー」
(本作ポスターから引用)

観客はそれを考えながらこの映画を観ることになる。
誰を信じればいいのか?真相は?

ルースは「差別に耐える立派で可哀想な無実の善人」なのか?
それとも、
「戦場で生まれ育ったために暴力的で過激な思想を持ち悪事を働く悪人」なのか?
どちらにも見えて、どちらでもない。
それがこの映画のすごいところだ。
この映画が問いかけてくるのは、
「あなたにはどう見えますか?」ということ。

ではルースは何者か?
ルースはルースなのだ。
もっと言えば「ルース」でもなく、養父母が発音すらできなかった名前を持つひとりの少年。それだけだ。

「◯◯とはこういうものだ」という固定観念。「◯◯はこういう人物だ」というレッテル。無意識の偏見や先入観。「悪役」の押しつけ。理想像の押しつけ。あらゆる人間の多面性。
とても難しい映画だと思う。
この映画で大切なのは、真相よりもむしろ、観客が自分の中にある先入観や偏見に気づくことかもしれない。

重い題材ながらも、サスペンス風のスリリングな展開と心理戦でエンタメ性も損なわれていない。

「スリー・ビルボード」にも似て、とても複雑で多様で見応えのある、いまの時代らしい映画。
hynon

hynon