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天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

3.5
タイトルによれば総登場人物は107人、上映時間は88分。んんん?単純に言ってひとり1分にも満たないってこと?それってちょっと、いやかなり物足りないのでは…と少なからず不安に思うところもありましたが、結論から言うとこれはただの杞憂に過ぎませんでした。尺を割くべきところはたっぷり、かと思えばほんの数秒しか登場しないキャストもいてメリハリがありました。構成と編集が巧みで、味のあるアニメも効いてる。

"Why are you creative?"への答えは千万差別、整合性などあったもんじゃないとっちらかった個性の数々に翻弄される監督の思考をめぐる長い長い旅の様相を呈している本作はさながらロードムービーのようでもあります。まるで禅問答のようだ、と思っていたら中盤、本当に監督が枯山水の庭園で砂熊手を握るひと幕があって思わずクスッと笑いが漏れてしまったじゃないか。そう、監督が親しみやすくてチャーミングなんですよね。カンヌで蝶ネクタイにベースボールキャップ被ってたりとか、なんかこう憎めないちゃっかり者感があるというか。天才たちにあやかるような不遜さではなく、跪いて首を垂れる素直さや謙虚さを常に忘れなかったおかげでこうして数多の天才たちが彼の言葉に耳を傾けてくれたんだろうなって。

惜しむらくはこの監督の人懐こさが存分に活かされていたとは言いがたい演出の数々で、具体的にいうと音楽が終始なんだかやけに重たくて陰鬱だったのですよね。全体的に画を引き締めるのには一役買ってたかもしれないけど、少なくともボウイやマンソンやペイジの場面では持ち曲使っていいんじゃないかという気がしました。それとタランティーノみたいに陽気なコメントには明るい曲がかかっててもよかった気がする。そこんとこもうちょっとなんとかして欲しかった。ホーキング博士の、公式サイトに載ってない前半のコメントがとても良かったな…。
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