まさ

hisのまさのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
3.7
ゲイを取り上げた作品を見るのは何作目だろうか。この作品は、その中でも、人が人を愛するということについて、色んな角度から考えさせられたように思う。岐阜の田舎に暮らす人々、裁判に携わる調査官や裁判官に弁護士、好意を寄せる女性、好意を寄せた女性、彼らを取り巻く様々な視点が、彼らに、そして私たちに投げ掛けられる。そんな中で、藤原季節演じる渚の子である空ちゃんが向ける眼差しは、シンプルで温かい。好きな二人がキスをして何がおかしいの? 4人みんなで暮らせばいい! 彼女の言葉は、常識や大人の事情を持ち合わせすぎた我々に、多くのものを投げ掛ける。一方で、老狩人の織田さんや、根岸季衣が演じる麻雀好きの老婦の投げ掛ける言葉には深みのある温かさがある。とりわけ、根岸演じる老婦が投げ掛ける、カミングアウトした彼らへの言葉には、全てを察しての深く温かい気遣いに思わず涙してしまった。この生きづらい世の中で、様々な背景を抱える人たちが、少しでも胸を張って堂々と歩くことができるといいな、そんな願いを改めてもたらしてくれた作品。今泉監督作品らしい会話劇に、俳優それぞれが素晴らしい息を吹き込んでいた。空ちゃんの仕草や言葉のひとつひとつが可愛かったのはもちろんだが、藤原季節と宮沢氷魚が、自分勝手で人懐っこいこじらせ系男子と、静かな佇まいに深い想いを秘めた男子を好演していた。スルーしていた今泉作品を見ておこうというチョイスは正解だった。
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