太田康裕

hisの太田康裕のレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
4.5
どうも良いらしいという噂を耳にしたので観た。
想像以上に良い。
同性愛を中心に描きつつ、けれどもそれだけでなく夫婦や親子、あるいは地域社会なかでの人間関係といったものを真正面から描く。
今泉監督の落ち着いた演出はうっかりすると嘘臭くなりそうな展開をあたかもドキュメンタリーのようにリアルに感じさせる仕上がり。
シーンによっては言い争いや暴力など不愉快な場面も多いのだけど、それら「全て」をある着地点に持って行ったラストの凄さ。
そこでの「秘密の共有」が見せる映画が終わった後も続くであろう登場人物のその後を感じさせる上手さ。

これは日本映画に残る傑作だと思う。

近年の多くの日本映画がおざなりにしがちな所を丁寧に作り込む美術の良さ。
主人公の家のシャンプーとコンディショナーが同一ブランドだったり本棚の几帳面な並べ方。
或いはIターンで田舎に移住した主人公とそのサポートが行き届いていることを感じさせる車のナンバープレート。陸運局の番号が現行3ケタなのに主人公だけ2ケタ(つまり古い)という事は、これ引っ越してから譲られたんだろうなぁなどと想像が広がる。
そうした細かなリアルの上に立つから「物語」というウソが本当に見える。

そして最大の見所は、子役の食事シーン。
実に美味そうに食べる。
これがまた子供らしく可愛い。

どこまで台本でどこからアドリブなのか分からないほどリアルに人間を描いた大傑作だった。