なっちゃーーん

hisのなっちゃーーんのレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
3.0
今泉監督らしい繊細なタッチで、ひとつの恋愛・家族の形が描かれてた。ふれたら消えてしまいそうなくらい、優しくて、柔くて。その中にも確かな愛を感じられるのがよかった。

宮沢永魚、松本穂香、この2人がスゴイ!!言葉数は少ないのに、ひとつひとつの表情・仕草から感情が伝わる。特に宮沢永魚の圧倒的な透明感と上品な佇まい、奥行きのある表情、すべてが素晴らしい!彼らがこの作品の世界観を創りあげていた。

日本にはまだ多くはないLGBT映画。テーマはよいけど、所々爪が甘くてもったいなかった。なにより同性愛者である2人が惹かれあう過程ががっぽり抜けているのが残念!だから最後まで全然感情移入ができなくて、他人事のように感じてしまった。

「恋愛の多様性」がテーマとしてあって、そのマテリアルとなる”親権争い“をうまく扱えていなかったようにもおもう。(そのあたりは『マリッジ・ストーリー』が巧い!ドロ沼離婚調停で重々しい“親権争い“を描きながら、冷たさと温もりとともに「人を愛するということ」を伝えてくれた。日本版『マリッジ・ストーリー』とは言わせない!)

それにLGBT映画でいうと『君の名前で僕を呼んで』『チョコレート・ドーナツ』『彼の見つめる先に』といった作品と、どうしても比べてしまう。今泉監督は恋愛モノが多いけど、毎回、題材はおもしろいのに、安易なキャラ設定・作り話的な展開が悪目立ちしていて気になる。

でも、ひとつだけ、すごくすごくすごく好きなセリフがあった。その一言がすべてを物語っていた。優しかった。他国に比べてLGBTQをはじめ多様性への理解が遅れている日本で、こういった映画が生まれたことを誇りにおもう!今泉監督、ありがとう!