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スミス都へ行くのこたつむりのレビュー・感想・評価

スミス都へ行く(1939年製作の映画)
3.9
アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のための作品。

第12回アカデミー賞ノミネート作品。
2016年が第89回ですから77年前―1939年の映画ですね。同年は第二次世界大戦が勃発した年。そりゃあ、現代に鑑賞したら、多少は野暮ったく感じるのも仕方がないですな。

だけど、物語としては。
そんな古臭さを微塵も感じさせない躍動感がありました。しかも、モノクロ映画にありがちな“格調高さ”も控えめなので「昔の映画に手を出したいけど難解なのは嫌だな」なんて思ったときにちょうど良いのです。そのあたりは「さすがフランク・キャプラ監督」と言えましょう。

その瑞々しい物語の概要は。
「腹黒い大人たちの思惑だけで、政治には無縁の《スミス》が政治家デビューする」という政治劇。彼にあるのは理想だけであり、知識も人脈も何もないのですね。そんな彼が苦境に陥ったときに、協力者を得て“意思の力”で乗り越えていく姿は、まるでヒーロー映画を観ているかのよう。とても熱い展開に胸が震えるのです。

また、そんな王道の展開は。
アメリカ人の大好きな“正義”を体現したもの。大義のために正々堂々と自分の信念を貫く―それが彼らの“正義”なのです。まあ、本作では《スミス》が劣勢だから思わず応援したくなりますが…優位な立場であっても変わらないのがアメリカ流。だから、本作の中で悪役とされている人たちだって、根っこは同じなのです。

そして、そんな視点で鑑賞すれば。
アメリカ人のことを理解する良い機会になるかもしれません。まあ、その“正義”を良しとするか、嫌いになるかは…別の話ですけどね。逆に言えば、“大国アメリカ”が嫌いな人にはダメな作品かもしれません。

まあ、そんなわけで。
政治劇ではありますが、それほど小難しい作品ではないので、出来れば色眼鏡を外してフラットな感覚で鑑賞したほうが楽しめると思います。

それにしてもアカデミー賞では。
残念なことに『風と共に去りぬ』(作品賞を含む9部門で受賞)に阻まれたのですが、ある意味で本作らしいエピソードと言えますね。そう。大切なことは結果ではないのです。「理想主義者」と揶揄されようとも「それでも…」と指を伸ばすことなのです。

だから、僕も。
たとえ駄文を積み重ねて批判されても。
「それでも…」と足掻き続け…たいと思っているのですが、打たれ弱いから…優しくしてくださいね。
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