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スミス都へ行くのおーたむのレビュー・感想・評価

スミス都へ行く(1939年製作の映画)
4.2
こちらも図書館から借りてきた作品。
まあ、いかにも図書館が好きそうな話で、すなわち、理想や正義の話ですが、そういう話が奇をてらわず真っ直ぐに描かれてるので、好感は持てました。

急逝した上院議員の後釜に据え置かれた、政治素人の青年の成長譚であり、彼が腐敗した権力と闘うお話。
「素晴らしき哉、人生!」や「群衆」と同じく、はっきりした主張があるので、見やすく、分かりやすかったです。
また、担ぎ上げられた男が、自身の役割を知り、なすべきことに目覚め、権力に対峙する…という筋は「群衆」とよく似ていて、もしかしたら「群衆」は本作の翻案だったのかな、などと思いました。
テーマはちょっと違うようですが。

シーンでいうと、やはりクライマックスのスミスの演説シーンが好きですね。
私は法廷ものがけっこう好きですが、このシーンは、「ルールは厳守しなければならない」点と、「ルール上アリなら何をやってもいい」点が、法廷ものの雰囲気とよく似ていて、面白かったです。
ああいう戦法で勝ちに行くとは予想していなかったので少し驚きましたが、盛り上がるし、良い終盤だったと思います。
良かったです。

振り返ると、主張の強さと娯楽性、両方が上手く溶け合った、キャプラ監督作品らしい作品だったなと思いました。
こんな政治家なんて、それこそフィクションの中にしかいないんでしょうけど、そう思えちゃうのが、残念な感じ。
いま見ると、理想を描いた作品である反面、理想どおりではない現実を嘆いた作品にも見えて、残る余韻は複雑です。
ハッピーエンドでシュガーコーティングされてるけれど、その実、どの時代でも通用する問いかけをド直球で投げかけてる、さすが名匠と言うべき一作。
良い映画でした。
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