ヨあら

KCIA 南山の部長たちのヨあらのネタバレレビュー・内容・結末

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

コリアゲート~朴大統領暗殺という政治的事件を扱いながら、暗殺の実行犯であるキム部長にフォーカスし非常に私的、ヒューマンな心理的動揺を描写した映画。イ・ビョンホン演ずるキム部長、本来大変に優秀でクレバーな人物として描写される彼が、権力闘争の陥穿にハマりこみ(というか、もうとっくにポイントオブノーリターンを過ぎていたことに気づき)、危険で愚かしくすらある挙に手を染めていく姿。傍目には滑稽さすら感じる分、「そこまでに至ってしまった状況」を思うと余計に背筋が凍る。時々「なぜか大学受験前日に戻っている夢」とか「数時間後に出す見積書が全く手付かずになっている夢」なんかを見る。キム部長に感情移入するほどに、その時の焦燥感がずっと続くような映画。独裁者特有の意図的なコミュニケーション不全を存分に駆使してくる朴大統領は本当に怖い。チェ(作中ではクァク)室長の映画悪役らしいコテコテの小物感も、背後に大統領が控えることで却って異常状態らしい恐怖を増している。大統領を巡る愛憎をBLに例える評も説得的だが、一方で組織人なら誰もが心当たりのある暗闘だろう...それにしても、成熟した大人たちがガチガチの公務を巡って繰り広げる悪戦苦闘は何故ここまで面白いのか!