しゆ

シン・ウルトラマンのしゆのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

面白いか面白くないかで言えば面白い。ただ正直、庵野秀明の不在を演出面やカメラワークの随所から感じてしまい、どことない物足りなさが残った。総監修・脚本(加えてクレジットではモーションキャプチャーなど随所に彼の名前を見かけた)とはいっても、やはり制作現場のトップである監督との立場の違いはこうして作品に表われるものなのかとも思った。過去のインタビューなんかを読む限り、''シン・ユニバース''の中でもウルトラマンこそ彼の思い入れの強い特撮シリーズであるようなのに、なぜ今回に限って最前線を退いたのか、鑑賞後に改めて気になった。(プロフェッショナルでも少し触れられてた『シンエヴァ』とのスケジュールの兼ね合い?)
開始1分で、観る者の頭に入れるつもりのない長文字幕と高速のカット割りはもはや定番。まさに初日初回に来るような視聴者(もちろん自分含め)が一番求めていたもの。『シン・ゴジラ』の片鱗を感じさせる、どころか、シン・ユニバースのコンセプトである、「現代の日本に〇〇が現れたら…」をウルトラマンで行っているのは大方の予想通り。けど全体的に盛り上がりに欠けてた。単純にウルトラマンがどうこうというより外星人との接触や交渉が多くて、あの銀色の巨人が摩天楼の狭間で怪獣と戦う姿をイメージしてると拍子抜けする。何度も『シン・ゴジラ』と比較して申し訳ないけど、そっちはゴジラの形態の変化で緩急をつけたり、内閣総辞職ビームとか印象的な場面が複数思い浮かぶけど、本作は1ヶ月もすれば構成を忘れそうなまである。ウルトラマンとゴジラの大きな差別点が敵との取っ組み合いであるというのが余計そのハードルを引き上げた。
最後のゼットン戦は青空に浮かぶ不気味さが秀逸で地球破壊規模にまで舞台を拡大させるも、人類の英知を結集する会議は画面映えしないVR→知恵は絞ったけど結局ウルトラマン便り→そのウルトラマンも0.1秒で殴って逃げるあっさり加減でもう終わり?って感じてしまった。外星人との戦いのたびにまぁ2時間のうちに次がクライマックスでしょと心の中で言い訳を繰り返してたのが、本心から楽しめてなかったんだと今になって思う。
次にキャスト。メフィラス星人役の山本耕史がドハマリで、誤解させても仕方がないけど嘘はついてない胡散臭さプンプンの演技が見応え抜群。これだけで観てよかったと思うくらい。
長澤まさみが体張っててエロティシズムなシーンがいくつかある。あれは批判が入りそうだけど、巨大化を表現するのに適した撮影だと必然的にあーいった形になるのでしょうがない気もすると感じる一方で、世界に売り出していくと豪語していてセンシティブな描写に気を遣えないのは残念だと思った。
HeySayJUMPの有岡については演技のチープさが目立って、観てるこちらが恥ずかしくなってしまった。美味しい役なのに『シン・ゴジラ』での石原さとみみたいな場違い感とまではいかなくとも自分の中で引っかかりがあった。
竹野内豊、嶋田久作、斎藤工は『シン・ゴジラ』に引き続き''別の役柄の人間として''(ここ重要)登場していて、明らかに今後推し進められるユニバース展開の布石に抜かりがなくてニヤリとした。巨災対と禍特対の専門家たちが集まった会議はいつになるんだろ。
こうして書くと不満ばかり募ったような内容だけど、『シン・ゴジラ』のような大衆にも疑問がなく明快に楽しめる作品を期待していたのが原因で、本作を先に観ていたらまた感想は違ったかも。
最後に、『シン・仮面ライダー』の特報やチラシが公開された件。これまでの大きな政府から等身大(文字通り)の暗く、また違ったテイストになりそうだけどどうなることやら。個人的には仮面ライダーが本命なので庵野監督というクレジットを期待してこの一年を過ごす。

「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」
しゆ

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