第一次世界大戦下、1917年4月6日。
西部戦線のドイツ軍の後退が罠だと気付いたイギリス軍は、若い上等兵のスコフィールドとブレイクに、前線にいる別部隊への作戦中止を伝える任務を課した。
タイムリミットの明朝までに間に合わなければ、進撃中である味方の兵士1600人が危険に晒される。
果たして二人は無事に戦地を駆け抜け、仲間の危機を救うことが出来るのか…。
久しぶりにIMAXでの鑑賞。
公開前から全編ワンカット風の映像が話題となり、映画賞レースでも撮影技術や特殊効果が表されることの多かった今作、絶対に劇場で体感したくて楽しみにしていました。
やはり前評判通り、その没入感はとんでもありません。場面転換はほぼなく、ひたすら兵士の背中を追うようなカメラワーク。自分も一緒に作戦に参加しているような気分にさせられます。迫力ある戦闘音はもちろん、足音や息遣いなどの細かな音響までが映画館を戦地に変えていました。
はじめはとんでもない轟音や壮絶な景色にビクビクしていたのですが、観ているだけなのに疲弊して次第に怖がることさえ出来なくなってくるような感覚に陥り、もしかしたら兵士達もこんな風に心を壊して行ったのかもしれないとまで感じたほどでした。
数多くの大戦の中で一つの戦地、そしてたった一日の一任務しか目撃していないはずなのに、戦争の恐ろしさ、人命の重さ、生きていることの大切さを思い知らさせるような映画、と言うより最早体験でした。
私はもちろん、実際に戦争を体験している人間ではありません。
でも今作で戦地に放り込まれたような臨場感を体感して、歴史を学び怒りや恐怖を抱くことはあっても、それは所詮俯瞰していただけに過ぎなかったんだなと感じました。
爆発音がすれば目を瞑りたいほど怖かったし、転がる死体からも腐乱臭が漂ってきそうで逃げ出したい衝動に駆られそうになった。それでも最後まで観続けなければ、一緒に生き抜かねばと真剣に考えている自分がいました。まさにあの没入感あってこそだったと思います。
賛否分かれている通り、大袈裟でドラマチックなストーリーではないかもしれません。それでもこんな戦況を体験した人が五万といたこと、こんな過酷な状況でさえ一つの作戦に過ぎないこと、戦争の壮絶な壮大さを思い知らせされるようで、なんだか余計に恐ろしかったです。何年にも渡る壮絶な出来事をハイライトで観るより、たった一日を凝視させられることに意味があったように思えるのです。
静かに流れてきたエンドロールでの涙は、一体どういう感情からくるものだったんだろう。
擬似体験でわかったつもりになる気はありませんが、今後戦争の恐ろしさに思いを巡らせる時、自分の中で一つの大きな物差しになればと思える作品になりました。
コリン・ファース、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチ、出演は僅かながら、象徴的に配置された大御所俳優たちも良いスパイスでした。