バルバワ

1917 命をかけた伝令のバルバワのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
4.5
有休を取ったので妻に「映画を観たいです…。」とスラダンの三井のように懇願すると割りとすんなり了承してもらい、意気揚々と家を飛び出しました。
LINEで「何本観るの?」との妻の問いかけに「4本よイエーイ✌️( ´∀`)✌️」とご機嫌な返信をしたら華麗な既読スルー。
今作の主人公のスコが家に帰りたくないという気持ちに共感しながら鑑賞しました!

いやぁ…労働ムービー!

あらすじは上司からの伝令を受け取った主人公スコが酷い目に遭いながら戦地を駆ける!…的な感じです。

【ワンカットという暴力】
今作は全編ワンカットというキャッチがついています(厳密に言うと完全にワンカットというわけではありません)。そこに文句があるわけではありません、ワンカットのように観せる撮影と編集の技術の到達点という面では本当に凄いし、没入感も半端なかったです。
ただ酔いました。
私の三半規管が雑魚過ぎという問題も多分にありますが、冒頭から主人公にベッタリくっついている絵が続き、挙げ句死体がわんさか出てくる…気持ちが悪くなる要素が揃っているので序盤は結構削られました。

【気になるあれこれ】
また冒頭、主人公のスコが左手をケガします。しかも、相棒のトムのせいでケガした手で一番触りたくないものに突っ込む羽目に…。そこから何が起ころうと常に左手とトム、そのあとに登場する牛乳が気になって仕方がなかったです。

【左手の悲劇】
まず、スコの左手が心配で、左手で何かを触ろうとすれば、それだけ「大丈夫か?痛くないか?」とソワソワしちゃいました。まぁ、スコがその左手を適切な量で且つ適切な種類の毒草・毒虫・毒薬をすり潰した物を混ぜた砂に突っ込み消毒し、毒手を完成させドイツ兵を薙ぎ倒していくならワクワクしながら観れたんですがね。←知らない

【トムの馬鹿】
あと、相棒のトムが色々雑な上に要らんことしいでイライラしました。何を隠そう前述したスコの左手が大変な目に遭ったのはトムのせいなんですよ!他にもネズミに気を取られたり、敵であるドイツ兵を助けたりしてエライ事になったのも全部コイツが発端。迷惑な奴です。

【牛乳の鮮度】
最後に牛乳。この牛乳はスコが野晒しの牧場にポツンと置いてあったバケツに入っていました。それを美味しそうに飲むスコ、そこから腹を壊さないか心配で心配で。
いつ搾乳したかわからない牛乳を水筒に入れ、こともあろうかその牛乳を赤ちゃんに渡すという…腹壊すこと必至!マジで止めなさい!
以上、左手とトム、牛乳が結構ノイズでした。

【自然の美しさ】
今作は自然の風景がとても綺麗でした。冒頭から緑が青々とした草原が映し出され、花は穏やかに咲き誇っており、人間達が起こした戦争など関係なく力強く息づいている草花を観ていると戦争というものが地球に必要のないものかと痛感しました。
冒頭と終盤の景色が重なるのも戦争がまだまだ続くことが示唆されているようでやるせなくなりました。自然が綺麗であるほど逆にその美しさが残酷に思えてしまい、塚本晋也監督の『野火』を彷彿した次第です。

【伝令兵の悲哀】
私はあまりゲームが得意ではないのですが、無双シリーズ(歴史上の武将を選び、ただただ人を斬り捨てていくアクションゲーム)が大好きでして独身の時は朝までピコピコしていたこともありました。このゲームには伝令兵が出てきて、取り逃がすとショッキングな音楽が鳴り響きエライ事になります。だから《伝令兵、出現!》というアナウンスがゲームで流れると「よっしゃ、叩き斬ってやらぁ!」と息巻いて討ち取りに向かってました。しかし、心ばかりの武装で戦地を駆け抜けるスコを観た後はもう…。もっと武装させて、護衛を着けてあげて欲しい!もう、私は伝令兵を斬らないッ!ガガーン(`□´)←よくわからない宣言
というか、これは第一次世界大戦が舞台ですが社畜として働く私にも置き換えられる話なんだなぁ、と思ったり致しました。

【スコ=ロッキー】
とにかく過酷な任務。ぶっちゃけ、いつ辞めても仕方がないと思いますし、私は根性がないので絶対逃げ出す自信があります。
しかし、スコは逃げない…ぶっちゃけ逃げられるタイミングはありましたしスコ自身恐怖がないわけじゃないです。でも、逃げない。私の中で彼の姿にある人物が重なりました。
映画評論家の荻昌弘先生が『ロッキー』の解説で「人生"する"か"しない"かというその別れ道で"する"という方を選んだ勇気ある人々の物語です!」と仰っていた熱い熱い金言が頭を過り涙が出ました。
なんだ、この映画の源流にあるのは『ロッキー』なんじゃん、スコはロッキーだったんじゃんッ!←思い込み激しめ
じゃあ、この映画好きにならないわけないじゃぁぁぁんッ!←うるさい

【最後に】
とにかく良い映画でした。しかし、左手とトムと牛乳がなかなかのノイズでしたが、今作の源流が『ロッキー』だし(←勝手に言ってます)、社畜として共感しまくりで大好きな映画になりました。
また、今作は映画館でこそ素晴らしさが味わえる映画なので是非是非劇場でご鑑賞くださいませッ!
…因みに家に帰ったら『スキャンダル』のポスターのシャーリズ・セロンのような仁王立ちをした嫁が待ち構えていましたよ☆
バルバワ

バルバワ