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1917 命をかけた伝令のミラーズのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
5.0
「ワンカット風撮影などの見どころも多々あるが、背景美術が素晴らしい」


第一次世界大戦の戦場を描いた映画は、過去にも決して多くは無いが、『西部戦線異状なし』を筆頭に『突撃』『誓い』『まぼろしの市街戦』『素晴らしき戦争』(ミュージカル!)など傑作揃いだか、今作は決定版と言える出来栄えだと思う。

作戦の中止命令書を持って敵陣を、突破する伝令兵二人に寄り添う様に、撮影された評判のワンカット風映像も素晴らしいが、個人的には、背景のロケやセットの美術や照明が見所で、とにかく素晴らしい。

最初の凄惨な塹壕地帯を抜けて、敵陣を超えると突然、美しい草原にポツンとある一軒の無人の農家には、庭には小さな果樹園があり、桜桃の花が咲いている。
美しくて静かだけど不穏な雰囲気のロケセット。

夜の廃墟の町が照明弾に、よって揺らめきながら動くコントラストの強烈な光と影の幻想的なイメージの場面も凄い。

廃墟の町のドイツ表現主義風の描写や幻想怪奇な雰囲気もあり、途中で撃たれた主人公は、実は死んでいて、ラストの朝陽に包まれている雰囲気も彼の死ぬ間際の幻想なのでは?解釈できる後半の展開も面白い。

話題のワンカット長回しも緊張感を持続しながら観客に主人公と共に戦場を巡る役割を担っている。
作劇上一度ワンカットが、途切れるが、これだけ大規模なロケセットに使うのは、綿密な計画と準備を考えると素直に感心する。

ただ、脅威的なワンカット撮影も近年では、複数のカメラと映像ソフトで、繋ぐ事が出来るのだが、今作では全体的な照明(ライティング)は、曇り空の下で行っていて、人物達の顔などに影が出ない様なソフトでフラットな光質を基本にして、光の方向性を抑えている印象。

ラスト間際は朝陽を強調しているが、ロケでの正面効果をどの程度人為的にコントロールしていたのか知りたい。


監督のサム・メンデスは、近年監督した2作の007シリーズを、端正な画面構成のアート映画に仕上げて、アクション映画としての魅力を、弱めてしまった印象だったが、今作のサスペンスあり、ショックな展開あり、アトラクション的な見せ場ありの作風で、緩急をつけて演出してあり、さすがの実力を見せつけてくれる。

ただし凄惨な戦場の現実は、若干弱められている感じを受けるが、多くの人に観てもらう為や戦争の無常を伝える映画としては傑作だと思う。(ポール・バーホーベンが監督したら18禁になるし)

個人的には、第一次世界大戦の背景を補完の意味でビーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」もおススメします。

[IMAXレーザー2D・字幕]にて