けいり部

マーティン・エデンのけいり部のレビュー・感想・評価

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
3.8
教養が彼を苦しみから救い出したが、
後に彼を苦しめたのも残酷ながら教養だった。
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主人公は労働者階級で育ち、小学校を4年で中退した船乗りのマーティン・エデン。
偶然助けたブルジョワ階級の青年の家に招待され、彼の姉であるエレナに一目惚れすると同時に、知識と芸術に溢れた世界を知り、"彼らと同じような言葉で、考え方で一緒に過ごしたい“という憧れを強く抱く。
そして彼はやがて自分の中に眠っていた文学的な才能・欲求に気づき、『作家になりたい』という夢を見つける。


労働者階級の主人公が、学校にも通えない圧倒的不遇な環境から独学で教養を身につけ次第に成功を収めていく姿はとても面白い。

しかし成功と引き換えに彼が失ったものはやがて彼をまた苦しめ始める。
人気作家になるほど、彼が本来持っていたものは消耗されていく。

富と名声を手に入れてなお絶望の淵にたったマーティンが見たのはかつての自分の幻。

なんとも切ない話だった。
まさに"絶望の青春"か。
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