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マーティン・エデンのKUBOのレビュー・感想・評価

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
3.7
劇場公開時に見れなかった『マーティン・エデン』を WOWOW で放送されたので鑑賞。

先日ハリソン・フォード主演で映画化された『野生の呼び声』の原作者ジャック・ロンドンの自伝を映画化、と書いてあったのだが、舞台はイタリア? どうやら原作は自伝を元にした小説『マーティン・イーデン』だけど、それをイタリアを舞台に翻案したもののよう。

主役のマーティン・エデンを演じるルカ・マリネッリはヴェネチア国際映画祭で主演男優賞を獲得しているが、前半は若い頃のアル・パチーノみたいな感じのイケメン。

小学校しか出ていない貧民層出身のマーティンが、ひょんなことから知り合った上流階級のお嬢さんと恋に落ち、作家を目指すようになる。

ナポリの街を歩くマーティンの姿に、イタリアの懐メロ(?)がかかる。街角の貧しい人々の顔のアップが多用される。前半は意外にポップな感じで始まる。

身分違いの恋に胸を焦がすマーティンだが、創作活動に専念するために離れて暮らすことに。恋人エレナからの手紙の返信のシーンだけ「第四の壁」を超えてエレナが直接観客に語りかけてくる。

中盤、初めて作品が雑誌に採用された後、一気に時間が進みビジュアルも変わる。売れっ子作家になり、持て囃されることにも辟易としている様子で生活も荒れている。

前半あれだけ苦労して働いて勉強して手に入れた成功のはずなのに、どうしてその成功の喜びを微塵も描かないのか? ジャック・ロンドンの原作自体がそうなのかな? だってジャック・ロンドン最初の成功があの『野生の呼び声』なわけだから、それが書けるまでとか、出版された喜びとか、見たかったな〜。

物語は、エレナとの恋の結末と、第一次世界大戦の開戦を告げて終わるが、あの水平線に沈む夕陽に向かって泳いでいくラストシーンはやはりマーティンの自死を暗示しているのかな? (実際にはジャック・ロンドンは薬物による自殺をしている)

またジャック・ロンドン自身は『野生の呼び声』を書いた翌年(1904年、明治36年)に日本でスパイ容疑で逮捕されてるらしいし、そんなエピソードも見たかったけど、『マーティン・イーデン』に書いてなかったんだろうし、そういう自伝じゃなかったのね。ちょっと残念。

作家の自伝ものとしては期待以上におもしろかった。やはりヴェネチア主演男優賞のルカ・マリネッリが魅力的。必死に成功しようともがく青年期も、恋にも社会にも疲れた晩年も、それぞれ違う魅力を演じ分けていて素晴らしい。

ジャック・ロンドン原作の『白い牙』も今度見てみよう。