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マーティン・エデンのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
3.3
「野性の呼び声」などで知られるアメリカの作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、イタリアを舞台に映画化。
監督はピエトロ・マルチェッロ、原題:Martin Eden(2019)

主人公の若者マーティン・エデン(ルカ・マリネッリ)は、貧しい労働者階級の生まれで、小学校を4年生の時に行かなくなり、11歳の頃から船乗り生活をしていた。
上流階級の令嬢、エレナ・オルシーニ(ジェシカ・クレッシー)と知り合って互いに惹かれ合い、彼女やオルシーニ家の人々のように高尚で文化的な生活を送りたいと思い、古本を買い漁り独学で読み書きや文法を学んで作家を志すようになる。
しかし、応募した小説は落選続きで、オルシーニ家との食事の席で彼らブルジョワの批判をしたことから、二人は喧嘩別れに。
やがて、エデンは作家として大成するが……。

~重要な登場人物~
・マーティに影響を与える詩人、作家(カルロ・チェッキ)、
・献身的に仕える下層階級の女( デニーズ・サルディスコ ) 、
・自宅に下宿させて世話をしてやった女性( カルメン・ポメッラ)

「あなた方を目指したい。あなた方のように話し、考えたい」
「あなたには教育が必要です」
「世界観を変えて希望を書いてみては。
それこそ現実だ。
あなたの書く物は売れないわ、結婚も無理。家族にもなれない」
「牢獄を築く者の言葉に、自由を築く者の表現力はない」
「君のはおとぎ話だよ。世話をやいてくれる娘を探すんだ。ありのままの自分を受け入れてくれる娘を探すんだ」

途中に何度か挿入されるスナップ映像でドキュメンタリー風な効果を狙っている。作風はテーマのせいで、全体に暗い。
作家として成功したかに見えても、下層社会に根差した作品は、憧れていたブルジョア社会(と人々)を過激に批判することになる。
やがて、憧れていたものと批判しているもののギャップで自己分裂、偏狭な人間嫌いになって孤立。
純粋に芸術を求めていたかつての彼は、自分を見失ない、精神はぼろぼろになり、絶望して何処にいくのか……

さて、最低限の教育(リベラル・アート)は、やはり必要だと思いますか?
なお、原作者のジャック・ロンドンは、社会主義者で、40才で自殺している。
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