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マーティン・エデンのRockoのレビュー・感想・評価

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
3.6
FansVoiceJP オンライン試写にて。
☆9/18公開☆

●冒険小説「野性の呼び声」などで知られるアメリカの作家ジャック・ロンドンの自伝的小説をイタリアを舞台に映画化。

●2019年ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、主人公マーティンを演じたルカ・マリネッリは男優賞を受賞。そのほか、イタリアのアカデミー賞と言われるダビッド・デ・ドナテッロ賞で脚色賞を受賞。

夢を追う情熱的な青年が荒々しく悲観的な作家に変化して行主演くルカ・マリネッリの演技が素晴らしい!表情と眼力と肉体全てから色気が放出されています。今の時代の俳優さんだよね?と思うほど16mmフィルムで映し出される古い時代設定に溶けこんでしまっています。

マーティン・エデンの格差で揺れ動く葛藤に対してドビュッシーやバッハを使ったクラシック音楽と沈黙がとても切なく、上流階級の令嬢との純愛を通して描かれる激動の時代と社会体制との衝突という普遍的なテーマがイタリア映画らしい芸術的で悲しくも美しく感じられた作品でした。






以下、多少ネタバレ


●不思議な時代設定
この映画に出てくる歴史上の人物や背景で時代がやたらと進むのに登場人物は大して歳を取っておらず、ちょっと混乱しましたが、アフタートークの監督曰く100年間もの20世紀を主人公の目を通して見るという実験的な試みだったそうです。
(歴史アーカイブよりもマーティン・エデンの成功後が唐突だったので、主人公に焦点を絞ってここの変化を丁寧に描いて欲しかった。ふんわりと芸術性で包んだようで実際は主演の力量次第な作品になった気もします。
監督の実験が功を奏したかどうかは公開後に皆さんのレビューを楽しみに…)
                  
●異なる国
サンフランシスコ生まれのジャック・ロンドンの物語をどうして丸々イタリア映画にしたのかも観るまで疑問でしたが、監督はナポリの生まれなので一番よく知っているナポリで撮った方がいいと思い、このネガティブな主人公の物語はアメリカよりもヨーロッパで受け入れられたし、イタリアに合っていると思ったからだと語っていました。
(これは正にその通りだと納得。イタリア人は陽気なイメージでもイタリア映画は暗いのが多いので悲しげな雰囲気が物語とマッチしてヨーロッパらしい雰囲気の漂う作品になっていました。)

ピエトロ・マルチェッロ監督とルカ・マリネッリには今後も注目して行きたいと思います❣️

●2020年120作目
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