YYamada

オフィサー・アンド・スパイのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.5
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈ユダヤ人仏軍大尉の冤罪〉
 ~ ドレフュス事件/ 1894年
・場所: フランス
・人物: アルフレド・ドレフュス

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。
・ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく…。

〈見処〉
①ロマン・ポランスキー監督が贈る
「歴史を変えた逆転劇」
・『オフィサー・アンド・スパイ』(原題:J'accuse)は、2019年に製作された歴史映画。監督は『戦場のピアニスト』『ゴーストライター』の名匠ロマン・ポランスキー。
・本作は、19世紀末にフランスで起きた冤罪事件ドレフュス事件を基にした2013年の小説『An Officer and a Spy』を原作に、権力に立ち向かう男の信念を描いた作品。
・出演は、事件の真相を探求するジョルジュ・ピカール大佐を『アーティスト』のジャン・デュジャルダン、スパイ容疑で冤罪逮捕されたドレフュスを『グッバイ・ゴダール!』のルイ・ガレル。
・本作は、2019年の第76回ベネチア国際映画祭にて、準賞に該当する銀獅子賞を受賞している。

②ドレフュス事件
・本作で描かれる「ドレフュス事件」は、1894年のフランスにて、当時の陸軍参謀本部大尉、アルフレド・ドレフュスがスパイ容疑で逮捕された冤罪事件。
・ドイツ陸軍武官に宛てられた機密文書を入手したフランス陸軍省は、その筆跡が似ているという理由だけで、ユダヤ系砲兵大尉のドレフュスを逮捕。終身禁固刑を言い渡し、フランス領ギアナ沖の離島に収監。
・1896年、陸軍情報部が真犯人を認知しながら、その事実を隠蔽していることがドレフュスの兄の耳に入り、文化人を巻き込む論争に発展。1898年には、フランスの文豪エミール・ゾラが発表した公開状により、国家を二分する政治的大事件に拡大。
・1899年、エミール・ルーベの大統領就任に伴い、ドレフュスを釈放。軍部による証拠の改竄や偽造が明らかになり、軍事機密との主張を濫用してきた軍部の権威は失墜。ドレフュスはその後も無罪を主張し、1906年に無罪判決を受けた。
・その後、ドレフュスに対するユダヤ人差別を目の当たりにした報道記者により提唱された、ユダヤ人国家建設を目的とする「シオニズム」思想により、後のイスラエル建国へと繋がったとする解釈もあるそうだ。

③結び…本作の見処は?
◎: 世紀の大スキャンダル事件を第三者の視点で描くことで、重厚な叙事詩として構成する作品。同じようなシーンが続き、冗長気味な前半部を淡々と描き、終盤の法廷シーンに鑑賞者の興味を惹き付ける演出はロマン・ポランスキーならでは。
○: 政治家気質の上司、自身を飛び越え密告を重ねる部下…。歴史映画でありながら、現代サラリーマンの悲哀も感じ得る稀有な作品。真理を信念としていたピカール大佐が次第に、国家システム側に帰着するのも、世の条理。
▲: 史実(原作?)に固執した展開によって、感情を揺さぶれる題材でありながら、娯楽映画としてのカタルシスはなく「歴史を変えた逆転劇」のキャッチコピーに沿うような展開を期待しないほうが良い。邦題も作品の展開を現していない。
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・複数の法廷映画を鑑賞してきましたが、クライマックス映えする描写がない作品は初めてかも…本作の意図は、理解出来ずでした。
・奥深き映画の世界の経験値アップとなった試写会の機会を与えていだいたFilmarksさんに感謝。
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