Kazu

おもかげのKazuのネタバレレビュー・内容・結末

おもかげ(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます



短編映画「Madre」(18分)が出発点となった今作、

冒頭から一気にストーリーの起承転結の"承"が描かれ、心臓が動悸を打ち、
胸が締め付けられる思いがラストまで続いた作品でした。

短編のその後を描いた今作、電話でのやり取りだけで事件の全容を描き一気に引き込まれる。

冒頭の激しいシーンから一転、

フランスの海辺、素晴らしく美しい風景と映像、静かなトーン、上品でスタイリッシュな流れで長編は描かれている。


原題がスペイン語Madre、
日本語で母です。

母親エレナの気持ちがメインストーリー、
激しく揺れ動く彼女の衝動の波が
周りの人には理解しがたいであろう、

けれど、
母親の視点からこの作品を観ると何度も胸が押し潰されそうになる場面や嗚咽するシーンがたくさんある。


謎が謎のまま明かされないフランス映画らしい。

母親としては行方不明の息子はどこかで今も・・・
と微かな期待を胸に10年、故郷スペインを離れフランスの海辺で暮らすエレナの気持ちが痛いほどわかる、
そう、わかるだけに後半はとても辛かった。

もう会える事がないと思っていた息子。

息子の面影をもつジャンと出会った。

おそらくこの10年間に幾度となく訪れた瞬間だったのかもしれない。

息子に似た男の子を見る度に・・・
(私なら抱きしめてしまってたかもしれない。)

青年なった息子、
葛藤する息子、
大人びる息子、
成長していく息子、
そんな姿をジャンを通して見届ける事ができた。
男として成長しつつある息子の姿が頼もしくも思え、母として女としてジャンに惹かれて行く彼女の気持ちがとても繊細に描かれている。

ラスト、お互いが必要とする感情が確かな事を確信した瞬間、エレナは過去を乗り越えることが出来たのだと思えた。

ラストの清々しいエレナの笑顔が私の心を救ってくれた。
Kazu

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