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おもかげのkassyのレビュー・感想・評価

おもかげ(2019年製作の映画)
3.6
試写会にて。
ロドリゴ・ソロゴイェン監督のSkype舞台挨拶つき。

第91回アカデミー賞短編実写映画賞にもノミネートされた『Madre』のその先を描いた長編作。息子からの一本の電話から始まる短編の『Madre』は冒頭にそのまま使用されており、緊迫感のあるショッキングな内容だ。

その後の物語は短編から10年後が描かれており、息子を失った女性の喪失感と再生を描いた作品となっている。

映画の舞台は彼女が働くフランス南西部の海辺のリゾート地ヴュー=ブコー=レ=バン。とにかくこのロケーションがものすごく綺麗!!長い砂浜、穏やかにも荒々しくもなる海、原生林のような森。職場のレストランから見える海の景色がなんとも言えず素敵だ。どこか癒しのようなパワーさえ感じる。

主人公は劇中ある1人の少年と出会う。それは息子の面影を宿した少年なのだが、彼女と少年の関係は一言では表せないほど複雑性がある。単純な関係ではなく、母性と女性性がない混ぜになったような複雑性なのだが、彼女は何か直接的なことは何も言っていないのに、見ているこちらが2人の関係にどきりとしてしまう。
少年と出会う事によって明るさを取り戻していく主人公の姿。それは恋人や元夫と対峙している時とは大違いだ。時として彼女の振る舞いは、どこかおかしいのではないか?とか色々勘繰りたくなる場面もある。それでも彼女はたしかな一歩を踏み出していた。

多くを語らない主人公と、周りの人の気持ちの揺れ動きに頭と心が追いつかない部分があったものの、ワンカメラでドキュメンタリーのように撮る手法と、美しい景色にぐいぐいと惹きつけられる映画だった。


監督のQ&A
・撮りたいのはストーリーであり、何かメッセージがあるわけではない
・2人の関係については、人間の多面性を表現したかった
・ロケ地に思い入れがあるわけではないが、監督自身が行ったことがあり海の自然と森の自然が素晴らしいので決めた。
・主人公の気持ちと天気がリンクしている。雨をまったり、晴れをまったりして撮影を行った
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