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異端の鳥のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ユダヤ人の少年はホロコーストから逃れるため東欧に住む叔母のもとに身を寄せる。しかし、叔母が病死したことから故郷を目指し一人旅を始めるのだが、周囲から苛烈な差別と迫害にさらされて......という話。

あらすじから戦争・歴史ものと予想して観始めたのだが、もっと深い人間の根源的な醜さを描いていた作品だった。約3時間の上映時間、観ていて本当に辛かった。
台詞を極力廃して役者の表情、特に眼光の強弱での演技で情景を表現しており、モノクロ映像がその手法をより際立たせていた。ユダヤ人への差別以前に少年が出会う人物たちの性質に元々かなり問題があり、性的被害や激しい暴力を受けるシーンは目を覆いたくなった。善人も出てくるのだけれども。
序盤は幼く純朴で怯えた様に運命を受け入れるだけだった少年が、中盤にいわゆる闇に落ちしてしまう展開がすさまじかった。殺人を犯したことをけっかけに言葉を失い明らかに目つきが変わり、攻撃性を備えた人物へと変貌するところは子役の演技も素晴らしくて印象に残った。最後に父親が迎えに来た時も頑な態度を崩さなかったが、ユダヤ人として同じく迫害されてきた父親の苦労を感じ取った時に少しだけ表情が和らぐラストは救いがあった。

DVDパッケージの写真は病気治すための祈祷の儀式なのね......
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