KAJI77

異端の鳥のKAJI77のレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.3
剥き出しになった人間の本性を巡る果てなき旅を、まだ小さい子供の視点で捉えた傑作でした。
シネスコで白黒、しかもセリフも少なくて淡々とした筆運びの映画なのですが、生きていくしか選択肢がないのに、生きていくための選択肢がない弱者の姿はとても壮絶なもので、全く目を離す瞬間がないほど説得力のあるドラマに仕上がっていたと思います。

現代においても同年代の若者の間では、やれ「親ガチャ」だ「子ガチャ」だと言う言葉が悲しくも飛び交っていますが、家庭の問題の相対的な質は変わらなくとも、社会の絶対的な質は時代に左右されていて、現代日本社会はかなりクオリティが高いんだなぁと今作を観ていると思わざるを得ませんでした。
やっぱり何かを犠牲にしてでも人間は全体的平和を目指すべきです。地球上でそれが可能な集団がいるとするなら、それはヒトだけですから。

群れに追いつけないはぐれ鳥は地面に落ちて置いていかれてしまう。
人間だって、自分の利益にならないと分かってしまうと、それまで一緒に暮らしていた者でさえも切り捨てなければならなくなる。人間の社会だってシステムは他の動物と大して変わりません。

でも本当に、鳥の群れと人の群れは同じなんでしょうか?
違うと信じたい心が、そういう見えない規範やモラルこそが、平和という神話に繋がると僕は狂信していたいです。
この映画を観ていてそう感じました。
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