Hasuki

異端の鳥のHasukiのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
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言葉がない、、。この衝撃を正確に言葉に表せるほどの表現力が私にあるか不安だが、できるかぎり努力しようと思う。私の乏しい語彙力では完璧には表せないかもしれないな。それくらい衝撃的な映画体験をした。とても久しぶりです。私はこの作品を映画のどのジャンルにも入れたくない。もしくは私にとって初めて見るカテゴリーであることは間違いないだろう。「異端の鳥」という確立した、今のところ私の中では唯一無二のジャンルとして扱いたい。抽象的にはなってくるが、これはもはや映画ではないと思う。この創作物の根底にあるものが、映画という形で体現されたというか、具現化するために映画という文化が使われたと言ったものかな。だからこそ、「映画」というくくりのなかのどこかにあてはめるということをしたくない。

映像という技術を駆使し、この作品が視聴者に伝えようとしているものは、普通に生きてきた、なんならたった18年しか生きてきていないような浅はかな私には到底受け止めきれるほどの大きさでは無いことは分かった。けれどせめてもの努力として、1寸の描写も見逃さないよう心がけた。

映画祭では途中退場者が続出したというが、私はこの少年の最後を見届けずにはいられなかった。行く先々で迫害を受け続ける少年がただひとつ見失わなかったものはただただ「生きる」という本能のみ。不条理を認識する暇もなく人間からの、生き物からの暴虐を受け続ける様はまさしく「不仕合せ」という言葉そのものであった。殺風景なモノクロームがその哀しさを増幅させる。血も涙もない世界で、少年に与えられたものといえば、迫害の泥とボロボロの衣服、冷えたスープ、ひとかけらのパン、ナイフ。そして最後に一丁の銃。最後に与えられたその銃は、ただ1つ、迫害の泥を浴び続けた不仕合せな少年に芽生えた感情である、「憎しみ」の表現法として使われた。異端の鳥として羽を切り刻まれ続けた少年はただ生きるというひとつの本能のために羽を動かし続けるしかなかったのである。この虚しい物語が存在することができた時代があったという事実が1番恐ろしいことである。

血も涙もない映像であるがゆえだろうか、私という視聴者に涙は一滴もこぼれなかった。私は前述したとおり普通の映画としてこれを見ることはできなかった。ゆえにスコアをつけることもできません。2022/11/30
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