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異端の鳥のギルドのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.8
【思想・宗教の源を追う悲しいロードムービー】【東京国際映画祭】
ある少年が家が全焼したことをきっかけにあてなく歩き続けて様々な出来事に襲われるロードムービー。

 一人の少年が筆舌に尽くし難い出来事に遭遇・洗脳されていく過程で表情・感情を静かに描く「恐ろしくも悲しく切ない傑作」だと思います。
ある意味で人間の思想のタブー / 裏の側面をイレイザーヘッドのダークなモノクロ映像で伝えるところが凄い。

 この映画を見ると差別の構造、宗教の神と悪魔の断定の曖昧さ / 信仰と道徳の乖離で見える「思想の多面さ」を味わえて各シークエンスで気づきを得ると共に残酷な撮影も凄すぎて圧巻されました。
 特に前半の少年と動物とのやり取りで二重構造の描写が続きますが、その構造の意味合いに気づいた瞬間に世界の恐ろしさに鳥肌が立ってしまいました。しかもその意味合いに気づくタイミングが観客に委ねられ、見る人によっては最初から気づく人もいるでしょうし、人によっては終盤まで気づかない。その構成が見事でスマートでした!

 それだけでも十分に評価される映画だけど面白いのはストーリーラインで見せ方が徐々に変わる、この映画がどう着地するかが読めないところかな。「あ〜こんな展開になるのかな」と思ったら別の地点に着いた時には「えっ、そうゆう方向に行くの!?」とか「あそこでさりげなく見せてたアレがここに生きるんだ!」とか「悪いものだと思ってたけど、そうゆう状況だったら仕方ないのかな…」など良い意味でどんな展開になるかが分からない楽しさもあります。

 一つ言えることは思想に支配された人間は怖い…だけでなく弱みを掴まれると思想や動物的本能で「生物」はどこまでも凶悪になれること、その凶悪さは一種の正義の歪さであり歯止めの効かない怖さが存在すること、価値観や先入観でどこまでも凶悪にも優しくもなれること。
それらを当ての無いロードムービーで見事に表現していた傑作だと思います。
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