えびちゃん

異端の鳥のえびちゃんのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
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絶望に次ぐ絶望の世界。ひとすじの救いの光さえ、瞬く間に遮断されてしまう不条理。少年はただ家に帰りたかっただけ。戦争や政治的な時代の渦に飲み込まれ、うす汚く邪悪な大人たちに搾取され、心を奪われてしまった少年。みな自分のことで精一杯で生きることに疲れ、日頃の憂さを少年をスケープゴートにして発散させる。イタチ、小鳥、馬、ヤギ。動物たちが次々とひどい殺され方をしていき、はじめは悲しんでいた少年も時代を追うごとに心が闇で覆われていく。この動物たちは少年そのものだろう。誰のせいか?誰が悪いのか?答えを出そうとすることはあまりにも無意味。すべて人間の業だ。父の腕に刻まれた数字の意味を反芻する。
主演の少年の精神状態が本当に気がかり。ハーヴェイ・カイテルが出てきた瞬間、すんごい安堵感で涙出たくらい。
陰鬱、ナレーションなし、劇伴もなし、白黒、計算された光と影、語られない多くの事項、と好きな要素が詰まっていたはずだけど、あまりに凄惨で救いようがなく心をごりごり削られてしまった。
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