けまろう

異端の鳥のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

『異端の鳥』観賞。アレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』の持つダダ的な汚さとタルコフスキー作品の持つ静謐な映像美(執拗に出てくる水、燃え盛る家、広大な草原等)を足して二で割った結果、シナジーが出なかったような作品。絶対に好みだと期待していた分残念。執拗なグロテスクと暴力性、それがホロコーストが民衆に齎した悪夢だったとしてもここまで描写されると疲れてしまうね。
ポイントは疎開先を失った主人公の少年ヨスカが村々を点々としていく中で、優しさに触れたのは見逃してくれたドイツ兵と保護してくれたソ連兵からだったということ。(途中で保護してくれた司教も優しかったもののすぐに亡くなってしまう)怖いのは他に責任転嫁をできてしまう民衆、というテーマは痛いほど伝わってくる。
名前を獲得していく過程もよい。ラストシーケンスまで、少年の名前は一切出てこない、というのも誰もその少年の名前を知ろうとしないからだ。道すがら出会う人々にとって、少年は異物(異端の鳥、Painted Bird)であって名状不要の存在。奴隷のように働かせられ、性欲の吐口にもさせられ、少年は「モノ」のように扱われる。最終的に父親と合流することで、JOSKAとしての人生を取り戻すシナリオは良かった。
似た雰囲気なら『草原の実験』の方が好きかな。
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