あるぱか2世

マリッジ・ストーリーのあるぱか2世のレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.5
136分をかけて描かれるのは「別れ」、ただそれだけ。けれども、じっくりと作り込まれた会話劇によって一組の夫婦がどのように離婚していくのかを目撃した気分になる。

制度と利害が絡みあう現代においては、離婚の手続きも一筋縄とはいかない。
昔の歌の歌詞にあったみたいに「うらみっこなしで 別れましょうね」なんてことはもうできないのだ。

チャーリー(演:アダム・ドライバー)は、自身が「父親」というものを肌身で感じてこなかったからこそ、子どもの気持ちを汲み取れず空回りしてしまったのだと思う。
そして、自らを認め受け入れてくれたNYに格別の思い入れを抱いてもいた。

一方、ニコール(演:スカーレット・ヨハンソン)は、実家であり故郷のLAへの思いを捨てられないまま「2秒で惚れた」夫に自らを委ね、支え続けていた。

裁判という第三者視点からすれば、LAに移住するというニコールの主張が有利なのは明らかであり、チャーリーのNYへの思いはあくまで本人の「主観」でしかない。

このことは、第三者視点の徹底によって、当事者の心情が否定されがちな現代の法制度の危うさがみてとれるようだった。

冒頭、これまでの積み重ねに耐えかねていたニコールは、自ら記した夫の長所をまとめた文書を読みあげることを拒絶してしまう。
ここで彼女が立ち止まって読むことができていたなら……。そう思わずにはいられなかった。

主演夫婦がとにかくすごい。オスカーダブル受賞してほしかったと思えるくらい。
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