Eita

マリッジ・ストーリーのEitaのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.9
リアル。機能しなくなった電動の門を協力して手動で閉めるシーンが象徴しているように、夫婦生活の幕引きも(おそらく最後の)共同作業ってことですな…タイトルが”Marriage Story”なので、内容と矛盾していそうだけど、めでたしめでたしで終わる結婚生活だけでなく、離婚することも結婚生活のあらわれのひとつ、ということじゃないかな。

それはともかく、チャーリーのLA仮住まいに来たあの調査員にいろいろと判断されるのは誰であっても嫌だろう。なんというか、ああいう物事の専門家なんだとしても、そこで実際に営まれてきた、そして今も営まれている<彼らの生活>の質感を、果たしてあの調査員はわかることができるんだろうか(これは弁護士たちにも言えること。チャーリーが腕を間違って切って結構流血するのは、今回彼が経験した幕引き作業の痛み、こんなはずではなかったのにという彼の苦しみを表現しているのかもしれない)。感情が欠落しているみたいで、そうしたことに全く関心がないように見えた。

それと裁判や調停での主人公2人の関係のあり方(疎外されている感じなど)とそれ以外の場面での関係のあり方に違いを出していたのも非常にリアリティがあった(こんなこと言うのも、僕が両親の仲違いと離婚のプロセスのほとんどを見届けた経験があるから。映画だと子ども、ヘンリーの立場かな)。

口論のシーンは圧巻。

もう元には戻れないのだとしても、互いに愛した過去は偽りではないということ。形は変わってしまったし、矛盾しているかもしれないけれど、今も愛しているということ。

脚本、演出、各俳優の演技、そしてなにはともあれスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの化学反応が光った、非常に良い作品。『ワイルドライフ』と共に2019年において記憶に残る離婚映画、もとい成長映画でした。
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