Masato

マリッジ・ストーリーのMasatoのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.4

ノアバウムバック監督は2作目の鑑賞。同じくネトフリ配給のマイヤーヴィッツを見ていたが、それは好きになれずに監督との相性は悪いと思っていた。
しかし、本作は素晴らしかった。監督の過去を基に作られたということもあってか、非常に力の籠もった映画だった。評判通りの傑作。

みんなが言うとおり、マリッジストーリーというタイトルとは裏腹に、離婚調停と息子の親権についてのプロセスを描いた映画。しかし、そのプロセスは別れるという意味と同時に、結婚というものを再確認する物語にもなっていて、納得のタイトル。

僕は恋愛も結婚も今までしたことない無縁ナードなので、この物語に親近感が湧くということはない。でも、経験していなくても、愛の揺らぎはしっかりと感じ取ることができたし、その愛の在り方に感動した。

「愛すること」って好きか嫌いかという二極化した考えで語られるものではない。どこか嫌いでも、それ以上に好きなところがある。またそれ以上に嫌いなこともある。でも、別れるという決断をした時、好きな部分を伝えることはとてつもなく難しい。難しいなんて話ではない。だからこそ、離婚でどちらが有利不利になるかなんて考えもしていない。平等であるべきと思っている。それは、心の底では愛してる部分もあるから。でも、ひとたび喧嘩すれば、ありもしないことばかり、口から嫌な言葉ばかり発してしまう。気付いたときにはもう遅い。

離婚調停の最中、二人が会って話をするときに、スカヨハ扮するニコールが笑みを浮かべる様が、微笑ましくもあり哀しい。一辺倒でないのが、歯がゆい。

ラストシーンの苦しさは形容し難い。それでも、ふたりはふたりのあるべき姿として歩んでいく。答えなんて存在しない究極的に難しい物語だった。

淡々としつつも、見せるところは魅せる。有名な口喧嘩のシーンは、カット割はしているものの、演技はそのままワンカットてしているという贅沢ぶり。このときのアダムドライバーとスカヨハの演技が近年稀に見る恐ろしい演技。徐々にヒートアップしていく怒りという感情と、それが止められなくなっている流れ、その後に出てくる後悔と憐れみ。すべて含めて圧巻。
実質、この二人の演技力で成り立っていた映画と言っても過言ではないが、極力キャラと演者に注力するように、徹底的に寄り添った演出で、最大限にキャストの力で奥深さを作り出させる監督の作風にも天晴。是枝監督的な雰囲気ある。
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