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マリッジ・ストーリーのSembのレビュー・感想・評価

マリッジ・ストーリー(2019年製作の映画)
4.0
劇中、夫役のアダム・ドライヴァーと妻役のスカーレット・ヨハンソンによる渾身の演技に終始圧倒されてしまいました...。スカーレットは「ジョジョ・ラビット」の母親役といい、すさまじい母性ですね。素敵です。
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幸せそうな家族写真のサムネイルやポスターを目にして小賢しいなとも思いつつ、自分が思い描く(理想の)幸福な家族への憧憬と彼らの幸せの絶頂を照らし合わせてしまいました。
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この映画で描かれる幸せとは、金銭的な安定や五体満足などの一次的な欲求ではなく、結婚相手への承認や愛そのものでした。この映画を観ていると、別居して関係は最悪なのに伸びきった夫の髪の毛を切ってあげたり、靴紐を結んであげたり、些細だけど本質的な他者への思いやりが描かれていて、そこに枯れない愛や切れない絆の、存在の確かさを感じるのですが、そんな日常的で小さなことに苦しいほどの愛おしさを覚えます。つまり、逆説的に愛が欠乏してくるんですね。
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離婚闘争も苦しいですね。弁護士たちが当人たちの意思に反して相手を傷つけ合い、余計に愛が欠乏します。二人が激昂して言い争いになるシーンでは暴言の限りを尽くしたアダムが泣き崩れ、スカーレットが泣きながら宥めます。二人で支えあっている画が美しいのに、一人で立とうにも、泥沼化してもはや自力では立てません。苦しいですよね。
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個人的には夫婦(他者)間の深層的な愛の形を強烈に希求してくる映画だと深く印象付けられました。
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