ノラネコの呑んで観るシネマ

HOKUSAIのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

HOKUSAI(2020年製作の映画)
4.3
画狂 葛飾北斎の生涯。
なかなか観応えある力作だった。
四部構成で前半の青年時代を柳楽優弥が、後半の晩年を田中泯が演じる。
柳楽優弥パートは、若き北斎が天才肌の歌麿や写楽から刺激を受け、自分だけのスタイルを模索してゆく物語。
どんな巨匠も、一日にしてならずの青春ストーリー。
この辺り、北斎の娘の葛飾応為ことお栄を描いた「百日紅 Miss HOKUSAI」とも被るのだが、本作でお栄を演じてるのは誰?と思ったら脚本家の河原れん。
役者さんじゃないけど、達者だった。
そのお栄が登場する後半になると、前半では背景にとどまっていた「表現の自由」というテーマが前面に出てくる。
ここで主人公のキャラクターの現代性と、葛藤の普遍性が意味を持つ。
中年期の数十年間をすっ飛ばしているので、物足りない部分もあるのだが、狂おしいまでの創作の熱に取り憑かれた、一人の画家の物語としてよく出来ていると思う。
男浪図、女浪図は以前小布施で見てその迫力に感動したことを思い出した。