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HOKUSAIのjamiのネタバレレビュー・内容・結末

HOKUSAI(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい映画。

彼の首無し死体が映され、当然自害なわけがなくて、小林多喜二やろ、と。そしたら案の定、龍馬伝最終回が如しの凄まじいシーンが奇想的に表現される。
日本素晴らしいよね、という映画ではないのだ。逆だったのである。あまりにラジカルなテーマなので、だから淡々と進んでいたのだ。衝撃が強すぎるから。
日本はこんな国だぞ、こんな低俗だぞ、こんな酷いぞ、こんなにも困難だぞ、本当に土人だぞ、目を逸らすのか? と突きつけてくる。文字通り、つきつけてくる。
日本人は今も、歴史を繰り返している。ウィシュマさんのことも、赤木さんのことも忘れている。統一教会の信者の人の生活を一切想像せず突き進む。
この憎悪はどこから来るのか。なぜこうも想像力がないのか。ロシアは悪、プーチンは悪。そりゃそうだろ。だけど、ほかに何を知ってる、どんな想像ができる? その想像力は本当に必要ないと言えるのか?

芸術の女神の言葉も、まさに戦争がいかに悪か、ということと繋がっている。争い、虐殺、粛清、惨殺、すべて子どもは関係ない。あのシーンは光が線になっていて、こういう芸術的差配も本作の見どころ。ロケーションも素晴らしかった。

焚書から始まるのも、この映画の本質である。手塚治虫が受けた暴力を、我々は忘れない。決して許さない。

北斎の若さ、そして狂気とも言える継続、風を起こしただけの一発屋、後世から見た時に歴史に残れなかったやつから残れたやつに対するクソみたいなマウント、などのこまごまとしたテーマもたいへん良かったが、何より蔦屋がキャラとして最高だった。尊敬できる。
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