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ハニーボーイのGreenTのレビュー・感想・評価

ハニーボーイ(2019年製作の映画)
3.5
『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の撮影中に public intoxication、「公共での泥酔」?で逮捕されたシャイア・ラブーフは、主演のザック・ゴッサーゲンくんに「ボクの映画を台無しにしないで!」と怒られて反省したそうなのですが、この逮捕でアル中のリハビリを受けさせられ、カウンセラーに「あなたはPTSDを患っている」と言われたそうです。

映画の中で、主人公のオーティスが、カウンセラーに助けられて自分の過去を振り返るシーンがありますが、あれはシャイア・ラブーフの実体験に基づいていて、そこで思い出される子役時代の記憶も、自伝的なものだそうです。

オーティスの子供時代(12歳)を演じるノア・ジュープが好演でしたね〜。可愛くて人気の子役なのに、ハリウッド(と思われる)撮影スタジオの近くの安いモーテル暮らし。向かいの部屋に住む大家族?の黒人の女性たちは、売春をしているのかなあ。オーティスと仲良くなるシャイな娘は、まだ15、6歳に見える。

青年時代を演じるルーカス・ヘッジズも良かった。この人は真面目で思慮深い青年というタイプキャストにハマった感じがしていましたが、オラオラな感じもできるんだ!とちょっとびっくり。中盤、シャイア・ラブーフが憑依したかと思うような演技だった。

オーティスの父親、ジェームスをシャイア・ラブーフが演じていますが、これも良かった。シャイア・ラブーフは結構演技派だなあと『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』でも思いましたが、こちらは自分の実の父親、自分をPTSDにした父親を演じています。

子役って、ステージ・ママみたいのがいるじゃないですか?自分がスターになりたかった夢を子供で叶える、みたいな。ジェームスもそんな感じで、「ステージ・パパ」なんだけど、撮影スタジオにオーティスを迎えに行かずに遊び呆けていたり、子供に寄生して生きているだけで、面倒は見ない。

でもオーティスは、それでも父親に去られたくない。私だったらとっくに見捨てているところだけど、でも12歳の子供にとっては、どんな親でも「この人がいなくなったら自分はどうなるんだろう?」って不安しかないのだろうなあというところが切ない。人気子役としてスタジオではチヤホヤされているかもしれないけど、生活自体は最底辺で、ファストフードにタバコ、コーヒーって生活。

でも父親のジェームスを演じるシャイア・ラブーフは、父親がアル中で暴力的なのは、自分は有名になれなかった敗者だという羞恥心や、成功している息子に対する嫉妬、酒に逃げることを辞められない罪悪感などが裏にあるんだなあと理解しているように見える。自分も大人になってみて、そういう葛藤が分かったんだろうなあと思う。

元々、カウンセリングの一環として書かされたものを脚本にしたらしいので、シャイア・ラブーフのセラピー映画には違いないんだけど、彼の子供の頃の思いがストレートに伝わってきて良かった。特に、12歳のオーティスが売春婦と思われるシャイな女の子とセックスするのではなく、ただ抱かれて眠りたい、という思い、あれが、オーティスも女の子も両方望んでいることで、子供が親を求めるのは、あれなんだなあ、でもそれを与えられない親がいるんだなあ、でもその親も傷を追っていて、愛情表現の仕方がわからない、みたいな悲哀が伝わってくる。