菩薩

歌うつぐみがおりましたの菩薩のレビュー・感想・評価

歌うつぐみがおりました(1970年製作の映画)
4.1
この映画が容易く一般流通しないのは、こんな自由を標榜する作品を「勤勉な」日本人が観たら明日から誰一人会社に行かなくてなってしまうからなんじゃないか…?人生には「ここぞ!」って時があるけど、でも「ここぞ!」って時はそんなに来ない、ってまぁ当たり前なんだけど、結局その「ここぞ!」を決められるかどうかが人間としての本質を問われる時であり、その人なりの価値ってものである。いつも飄々と、風の吹くまま気の向くままに世の中を徘徊しつつも、ここぞの時にはバシッと決めるこの主人公が、睨まれはするけど憎まれはしないって言うのはきっとそういう事で、それ以上に他人に愛され必要とされるってのは彼自身が誰かにとっての「ここぞ!」の役割を果たし続けて来た結果であり、サッカーで言えばスーパーサブとしての役割を、「ラスト5分で一点欲しい…」ってのを本人理解はせずともギリギリのところで果たして来たからに他ならない。人生はタイミング、そんなタイミングをずーっと探し続けてるんだから本人はそりゃ疲れるだろうけど、動き回ってる事が本人にとっての準備運動でもあるのだろう。秒針より早く進み続けた彼の時計は人より早く止まる訳だが、それでも世界は刻々と時を刻み続ける、誰かと何処かで、いつかの未来で、世界を丸く収める為に明日もまた、彼は遅刻とすっぽかしを繰り返しながらも、すんでのところで「ここぞ!」を決め続けるはずだ。枝から枝から忙しなく、確かに歌うつぐみはおりましたとさ。
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