天津甘栗

娘は戦場で生まれたの天津甘栗のレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
4.0
ジャケットとタイトルの強烈なインパクトに惹かれ、かねてよりみたいと思っていた作品。

食料が少なくても、耐えず空爆や銃声があっても、友人家族が亡くなっても、明らかに子育てするような環境ではなくても、故郷へ居続ける事を選択。アレッポで生き抜こうとした人々の記録。
その選択は、愚かしい戦争に屈することなく自身の尊厳を保つため。生きるということを未来へ示すため。

爆撃を受けた9ヶ月の妊婦を帝王切開し、処置する衝撃の映像が凄まじい。顔が歪み、どうか生きてと願う。そして生命の力を感じる。

耳を裂く爆撃の音。巻き上がる噴煙。標的にされ次々と空爆される病院。
砲撃と銃声が鳴り響く自宅のベランダで不安に駆られ泣く少年。呆然とした顔中血まみれの少年。
ブルーシートに包まれ陳列された遺体。地面に掘られた大きな穴へまとめて土砂で埋められる無数の遺体。
気丈に明るく振る舞い続けた母親の、ついにこぼれた涙をそっと手で拭う娘。
ぐったりとした子供に「目を覚まして」と慟哭する母親。息絶えた娘の体をゆすり続ける父親。
脈のない動かなくなってしまった小さな弟の遺体と、涙を流しながらその子の額へキスをする幼い兄。

これらは映画的演出などではない。21世紀の、私たちと同じ時間にある現実。心が切り裂かれ、抉り取られてしまうよう。
天津甘栗

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