メザシのユージ

キル・チームのメザシのユージのレビュー・感想・評価

キル・チーム(2019年製作の映画)
3.5
アフガニスタン。アンドリュー・ブリグマンはディークス軍曹率いる小隊に所属することになった。小隊はディークスの指示で民間人をも殺害していたため、アンドリューは良心の呵責に苦しみ、軍の上層部に事の子細を報告すべきか迷っていた。アンドリューが決断を躊躇しているうちにも、事態は深刻さを増していった。しばらくして、ディークスはアンドリューが挙動不審になっていることに気が付き、彼の忠誠を疑い始めた。
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ドキュメンタリー作家として2度のアカデミー賞にノミネートされたダン・クラウス監督が、2010年に起きた事件を題材に手がけたドキュメンタリーを自ら劇映画化した本作。全米でA24が配給権を獲得した。

「兵士は殺すことが仕事」という考えの軍曹が主人公・アンドリュー達の隊に上官としてやってくる。そんな中で主人公が目撃したアフガニスタンの民間人少年の殺人事件。事件を目撃したアンドリューは良心の呵責に苛まれることになる。戦争状態のときに、良心は兵士としての行動や考えの妨げになるのか?軍隊内でのパワハラや、強い者だけが仲間と認められるホモソーシャル感が観ていて辛くなった。

映画の中で「良心の空砲」という言葉が出てくる。19世紀、スパイを処刑するときに複数の狙撃手のライフルに一つだけ空砲を忍ばせていた。それは誰が空砲を撃ったかということが重要なのでは無く、空砲があることで「俺たち全員で殺した」ということになり、そうすればその後、人を殺すことに抵抗が無くなっていく。

戦争は誰かの責任ではなく、全員の責任で人を殺す。たしかに責任は分散されるかもしれないが、人を殺したという事実は変わらない。人は間違いも罪も犯す、大切なのは過ちを認めることと、そして良心の言葉に耳を傾けること。
こうした軍隊内での兵士の罪を描く映画は過去にも「告発のとき」とかあったが、この「キルチーム」もかなりの良作だった。