幽斎

ファナティック ハリウッドの狂愛者の幽斎のレビュー・感想・評価

3.6
John Travolta、第40回ゴールデンラズベリー賞最低主演男優賞受賞作品。中国ウイルスで閉塞感の有る生活が続き、職場と家庭の往復、或いはリモートで一日中家に居る、生活リズムが侵される中で趣味は潤いを与えますが、度を超すと自分自身を蝕んで逝く。

Fred Durst監督はカルト・スリラー「呪い村436」準主役の俳優、本業は「リンプ・ビズキット」フロント、ロックに素養が無いので、詳しい友人に尋ねると結構なお騒がせらしく、ライヴ会場でファンと口論、ファンとセックスする動画が流失、limp biscuit=マリファナのスラング。本業はデビュー曲が200万枚を超えるセールス。2作目は700万枚、3作目は累計1200万枚を越す大ヒット、何の異論も無い"笑"。

そんな彼も今年で50歳、若い頃の体験をスクリプトして製作。「ストーカー」異性間同志がお約束ですが、中年を中年親爺がストーキングするプロットは珍しい。ハリウッドのアイコンJohn Travoltaが演じるなら尚更。Travoltaはオファーが来た時「これは面白い!」出演を快諾し資金まで出した。彼の行為は「純愛」と呼べるモノで余計に笑えない。男女間のセックスと違い、対価を要求しないストーカー程始末の悪いモノは無い。正しい意味でのヒステリーが高じた恐怖を見事に浮かび上がらせる。

付き纏われるDevon Sawaと言えば「ファイナル・デスティネーション」その後もB級作品に途切れる事無く出演するが、彼も42歳。Travoltaの行為は1㎜も共感出来ないし法に触れる行為を繰り返すが、キャラクターの為せる技で「最後は(私の嫌いな)ハッピーエンド」的モーメントに包まれる摩訶不思議。対するSawaも、日本のアイドル同様にサイン会を契機に、自身の生活が侵食される難しい役を上手く演じた。本作はストーカー映画の金字塔「ミザリー」の進化形にも映る。

傑作に成り得たプロットだが、監督の演出で全て裏目「笑うに嗤えない」オンパレード。シノブス的に出演者は「粗忽」全くリアリティが無い。ストーカーの設定は「杜撰」まるで吉本新喜劇。Travoltaは多くの傑作を残したが、私のマストは「ミッドナイトクロス」「フェイス/オフ」「ソードフィッシュ」「閉ざされた森」だが、Scientologyを公言してからスタジオと疎遠に為り、今の彼はハリウッドの中では落魄れてる。自身が製作した作品に自身が主演、蛇が自分の尻尾を食べる「ウロボロス」生活。もう一度Quentin Tarantino監督に助けて貰うしかない。

スリラー的に言えばムースは明らかに自閉症で「狂気のストーカー」宣伝文句は明らかにコンプライアンス違反で、ASD自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群への冒涜、発売元ギャガには猛省を促したい。ムースにはハンターは偶像で有り、底辺の生活を送る彼には「救い」の存在。好きが高じて暴走するのは、全ての人に起こり得る。他人事と笑わず襟を正して観るべき、かもしれない。

トラボルタ改めキモボルタ。彼の現在地を確かめる意味で観る価値は有る、かもしれない。
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