むーしゅ

ラスト・クリスマスのむーしゅのレビュー・感想・評価

ラスト・クリスマス(2019年製作の映画)
3.9
 いよいよ今年も残すところ後1か月ちょいということで、「クリスマスらしい映画を」と思い鑑賞してみました。タイトルを見ての通り、本作はWham!が1984年に発表した同名の楽曲をベースに作られた作品です。

 歌手を目指してロンドンのクリスマスショップで働くケイトは、家族ともうまくいかず友達の家を転々として生活している。そんな時、空を見つめる不思議な青年トムと遭遇する。最初は彼に警戒するケイトだったが、彼女の抱える問題を支えようとしてくれるトムにいつしか心惹かれていくのだが・・・という話。本作の原案はケイトの母親役でも出演しているEmma Thompsonと現夫のGreg Wiseが共同で行っており、Emma Thompsonは脚本と製作も担当しています。

・テーマは"Last Christmas"
 ベースとなっている"Last Christmas"は世界的に有名なクリスマスソングの1つとして、日本でも非常に有名な1曲ではありますが、明るいイントロとは裏腹に歌詞は失恋をテーマにしています。「去年のクリスマスに失恋したけれど、今年こそは立ち直って別の誰かを好きになろう」という内容の歌詞が、日本中のデートスポットで流れているのには違和感がありますが、本作はそんな歌詞をベースに今年こそは幸せを掴もうとする女性ケイトを主人公にしています。
 歌詞の中に登場する1つの単語の解釈を変えている点がこの映画のポイントなのですが、物語の半分を超えたあたりで、その点に気づき始め、気づいた瞬間になるほどね~となんだか暖かい気持ちになる、そんな作品ですね。

・溢れるロンドンらしさ
 本作の魅力は、ロンドンという街ですね。監督のPaul Feigはインタビューで「この映画においてロンドンは、重要なキャラクターのひとつと言って良い」と語っていましたが、コヴェント・ガーデン等の実際の有名スポットで撮影を行われた映像は、セットとは違う生きたロンドンを感じます。個人的にもロンドンは非常に思い入れの強い街であることもあり、それを見ているだけで満足とも言えるようなロンドンらしい風景が素晴らしいです。
 特にケイトが好きになるトムは、ロンドンの街中で立ち止まって人が気づかないものに気づく人であり、彼の視点で見るロンドンという風景がなかなか興味深いです。物語自体は大きく変動するわけではない作品のため、この辺りの要素を楽しめるかどうかが本作の好みがわかれるポイントでしょうか。ロケハン頑張ったんだろうなとかいちいち気にしてしまいます。

・憎めない主演のEmilia Clarke
 主人公ケイトは家出をしている状況にあることから、物語序盤からバーでその日泊めてくれる男を漁るような主人公には向かないタイプです。この設定いる?と疑問視してしまう部分もややありなのですが、それを払拭するようなEmilia Clarkeのチャーミングさが良いですね。「世界一キライなあなたに」のルーに通ずる可愛さも本作の魅力です。その他の出演者ではクリスマスショップの店長"サンタ"を演じるMichelle Yeohもキャラクターが出来上がっており良かったです。
 ちなみに相手役はマレーシア出身のHenry Goldingですが、ちょっと老け顔なこともあり歳の差カップルかと思ったら実はEmilia Clarkeのほうが微妙に年上であることに驚かされました。

 全体的には心温まるラブストーリーということで非常に見やすい作品でした。Last Christmasの曲の良さにかなり引っ張られている部分はあるかと思いますが、クリスマスを感じる作品として楽しめる作品であると思います。余談ですが個人的には「アナと雪の女王」を知らないトムは何かの伏線かと思いきやスルーしている点と、ケイトがトムに打ち明けるシーンで"threw away"と表現しているのを歌詞になぞらえて"gave it away"にすれば良かったのにという点ばかり考えてしまいました(笑)
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