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ディック・ロングはなぜ死んだのか?のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【大きなイチモツをください】
ダニエル・ラドクリフが七つ道具つき死体役として活躍する唯一無二の作品『スイス・アーミー・マン』で一躍有名となったダニエル・スキナートが再びA24と組んでチン作を作りました。その名も『The Death of Dick Long』。直訳すれば、《ディック・ロングの死》なのだが、隠語で訳せば《大きなイチモツの死》というトンデモタイトルとなっています。またポスターを観ると分かるように、一見絵画風に陰影の間に注目人物を置く美しい構図になってはいるものの、男が逸物から花火を噴射している仰天ヴィジュアルになっています。果たしてどんな作品なんでしょうか?監督曰く、『ファーゴ』や『シンプルプラン』を研究して作った作品とのこと。実際に観てみました。

もしかしてだけど(もしかしてだけど)
もしかしてだけど(もしかしてだけど)

アカデミー賞脚本賞獲っちゃうんじゃないの~

と思うほど『スイス・アーミー・マン』同様、意外にも奥深い作品でした。無論A24はアカデミー賞に『ミッドサマー』か『The Farewell』を推すとは思いますが、鋭い作品には変わりありません。

バンドマンは夜な夜な青春を謳歌するように、酒を呑み原っぱで股間に花火をツッコミ噴射している。しかし、次のカットではメンバーの一人であるディック・ロングが死亡しているではありませんか。Zeke&Earlはディックの死因を悟られないように家族に隠そうとするのだが、娘や妻に疑われ、さらには警察の疑いの目が投げかけられるという内容。

舞台は、田舎町。田舎町は娯楽が少ないのでスキャンダルが娯楽となっており、すぐに伝播してしまう。ディックの名誉のために事件を隠蔽しようとする男たちの苦しみが描かれるのだ。『スイス・アーミー・マン』では無人島で一人サバイバルする者のイマジナリーフレンドが強い生命力を維持するという斬新な理論を打ち立てました。『The Death of Dick Long』では若き盛りのせいで失ってしまった《大きなイチモツ》を求め、そして作られてしまった事実に対していかに村社会から隔絶することで、汚名を払拭するのかといった生々しいプロセスが描かれます。

俯瞰で描かれる本作は喜劇だ。しかしながら、ここで起こっている地方都市の好奇の目というのは悲劇である。また男の若き盛りによる馬鹿馬鹿しい行動という過去をいかにして聖域として隠し通せるのかといった普遍的テーマを持っています。


この珍道中の鋭さに唸るものを感じました。