とらキチ

誰がハマーショルドを殺したかのとらキチのレビュー・感想・評価

4.5
劇場公開時鑑賞しましたがDVDにて再鑑賞再レビュー。
“ひょうたんから駒”というか、“嘘から出た真”というか、“藪をつついて蛇を出す”というか…
1961年に起きた国連事務総長ダグ・ハマーショルド氏の事故死をテーマにしたドキュメンタリー。…だったはずなのに、俄かには信じ難い事柄が次々と明らかとなっていく。
監督はマッツ・ブリュガー。一般市民をヨーロッパで北朝鮮を支援する組織に潜入させ、架空の武器取引を持ちかけたりして、彼の国の国際的な闇取引(武器密輸)ネットワークの恐るべき実態を明らかにした怪作「THE MOLE」を手がけた人物。それだけでもある程度のヤバさは伝わるかもしれないが「THE MOLE」より前に製作された今作は、それ以上にぶっ飛んだヤバさを放っている。
長年この事件を調査してきた人物と現地に飛んだりして新たな証拠を探っていくのだが、事件の裏に謎の秘密組織が見え隠れし、その組織によるとんでもない陰謀の存在が明らかとなる。
今作は監督であるマッツ・ブリュガー自身が黒人女性の秘書を雇って彼女達に口述しタイプライターで記録する、というトリッキーな形式で進んでいく。コレは語られる内容があまりに現実離れしているため、敢えてメタ的な要素、シャレを入れていかないと誰にも相手にされない畏れがあったからではないか?と推測される。実際、作中でも秘書のお姉さんに「話が逸れてませんか?」とツッコミを入れられたりもしている。何故、確たる物的証拠もないまま、かつてその秘密組織に所属していた人物の証言を信用できるのか…等、ツッコミどころは満載だが、その語られる内容には本当に驚愕させられるので、まるでヨーロッパ系の陰謀論ミステリーを読んでいるように、ずっと見れてしまう。
WWⅡ後、1950年代後半から1960年代にかけて民族自決の機運が高まり、多くのアフリカ諸国の独立がなされた時代。その頃の所謂支配者層の人達の本音、闇が垣間見える。
以前の劇場鑑賞後、どうしても今作を再び見たくなって今回DVDを入手したのだが、パッケージをよく見たら発売元があの“アルバトロス”である事が判明して、なんか妙な香ばしさを感じた(苦笑)。
とらキチ

とらキチ